
個人再生の手続きが気になっていませんか?
「個人再生って、何をどうすれば進むの?」
「どのくらいの期間がかかるの?」
「自分でも書類を準備できるか不安で…」
「弁護士に頼んだあと、自分は何をすればいい?」
個人再生を検討されている方から、こうしたご質問をよくいただきます。手続きの全体像が見えないまま相談することへのためらいを感じている方も少なくありません。
結論からお伝えすると、個人再生の手続きは「弁護士への依頼→申立準備→裁判所への申立→再生計画の認可→返済開始」という大きな流れで進みます。大阪地裁では、申立から認可決定まで概ね3〜4か月が目安です。
この記事では、個人再生の手続きをステップごとに、実務の視点からわかりやすく解説します。
個人再生の手続き、全体の流れ
個人再生の手続きは、大きく次の6つのステップに分けられます。
- 弁護士への相談・依頼
- 申立準備(書類収集・再生計画の検討)
- 裁判所への申立
- 手続開始決定・債権届出
- 再生計画案の提出・書面決議(または意見聴取)
- 認可決定・返済開始
以下、それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
ステップ1:弁護士への相談・依頼
個人再生を進めるにあたって、まず弁護士に相談することをお勧めします。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があり、どちらが適しているかは、収入の状況や債権者の構成によって異なります。また、個人再生が適しているのか、任意整理や自己破産のほうが合っているのかの判断も、この段階で行います。
弁護士に依頼すると、受任通知が各債権者に送付されます。受任通知が届いた債権者は、弁護士を通さずに債務者本人に直接取立て・督促を行うことができなくなります(貸金業法第21条第1項第9号および債権管理回収業に関する特別措置法第18条第8項)。なお、銀行や個人からの借入れについては、これらの法律の直接の適用対象外となります(ただし、銀行には別途監督指針等に基づく行為規制があり、実務上は弁護士受任後の直接督促を控えるのが通常です)。
受任通知の送付後は、申立の準備に入ります。
ステップ2:申立準備(書類収集・再生計画の検討)
申立準備の期間は、手続き全体の中で最も時間がかかるステップです。
必要書類の例
個人再生の申立には、多くの書類が必要です。主なものを挙げると、次のとおりです。
| 書類の種類 | 内容 |
|---|---|
| 住民票・戸籍謄本 | 本人・家族の確認 |
| 収入を証明する書類 | 源泉徴収票、給与明細(直近2〜3か月分)、確定申告書など |
| 借入れに関する書類 | 各債権者の残高証明書、契約書など |
| 財産に関する書類 | 不動産登記事項証明書、預貯金通帳(直近2年分)、保険証券など |
| 家計に関する書類 | 家計収支表(直近2か月分程度) |
これらの書類は、ご自身で取得・準備していただくものも多くあります。
書類の準備が遅れると、その分だけ申立が後ろ倒しになります。 弁護士からの依頼事項には、できるだけ早めに対応していただくことが、手続きをスムーズに進めるうえで非常に重要です。
返済計画の見通し
この段階で、弁護士と一緒に「最低弁済額」の試算も行います。個人再生では、借金をすべてゼロにするのではなく、一定の金額を3〜5年間で分割して返済します。最低弁済額の計算方法については、「個人再生の返済額はどう決まる?最低弁済額の計算方法」で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
ステップ3:裁判所への申立
書類が揃ったら、裁判所に個人再生の申立を行います。申立は弁護士が代理人として行います。
申立に必要な費用(予納金など)も、この段階で納付します。
大阪地裁の特徴:個人再生委員が原則選任されない
個人再生の手続きでは、「個人再生委員」が選任される場合があります。個人再生委員は、申立人の財産や収支の調査・確認などを行う役割を担い、その報酬として、裁判所や事件の内容にもよりますが、おおむね15万〜30万円程度の予納金が必要になります。大阪地裁では、事案によっては30万円とされている類型もあります。
ただし、大阪地裁では弁護士が申立代理人となっている場合、個人再生委員は原則として選任されません(大阪地方裁判所倒産部Q&Aに明記)。弁護士が代理人として申立代理人の役割を果たすため、委員の選任が不要とされているからです。
これは、大阪地裁で弁護士に依頼することのメリットのひとつといえます。個人再生委員が選任される場合と比べて、費用面でも期間面でも有利になります。
ステップ4:手続開始決定・債権届出
申立が受理されると、裁判所での書類審査を経て、手続開始決定が出されます。大阪地裁では、書類に問題がなければ申立からおおむね2週間程度で手続開始決定が出されるのが一般的です。
手続開始決定が出ると、各債権者に対して債権届出の通知が送られます。債権者は、この通知を受けてどれだけの債権があるかを届け出ます。債権届出期間は、手続開始決定から4週間程度が目安です。
ステップ5:再生計画案の提出・書面決議(または意見聴取)
債権届出が確定した後、弁護士が再生計画案を作成し、裁判所に提出します。
再生計画案には、返済総額・返済期間・返済方法などが記載されます。
小規模個人再生の場合:書面決議
小規模個人再生では、債権者による書面決議が行われます。
書面決議の流れは次のとおりです。
- 裁判所から各債権者に対して、再生計画案と議決書が送付される
- 債権者は賛否を記載して裁判所に返送する(回答期間は概ね4週間)
- 回答がない場合は賛成とみなされる
- 下記の要件を両方満たす限り、再生計画案は可決される
書面決議の可決条件は、「計画案に不同意の回答をした議決権者の数が、全議決権者の半数未満であること」とともに、「不同意の議決権額が、全議決権者の議決権総額の2分の1を超えないこと」の両方を満たすことが必要です(民事再生法第230条第6項)。
なお、書面決議の具体的な運用(書面の様式、回答期間の細かい設定など)は、裁判所によって差異があります。
給与所得者等再生の場合:書面決議は不要
給与所得者等再生では、債権者による書面決議は行われません。代わりに、債権者の意見聴取のみで足ります。
ただし、給与所得者等再生には「可処分所得の2年分以上を返済すること」という要件があり、小規模個人再生より返済額が高くなるケースがあります。どちらが適しているかは、個別の事情によって異なります。
ステップ6:認可決定・返済開始
書面決議(または意見聴取)の結果を踏まえて、裁判所が再生計画認可決定を出します。
認可決定が確定すると、その再生計画に従って返済を開始します。認可決定の確定後、概ね翌月から返済が始まるのが一般的です。
申立から認可決定までの期間の目安
大阪地裁では、「100日モデル」と呼ばれる運用の目安があり、弁護士が代理人として申立を行う場合、申立から認可決定まで概ね3〜4か月で進むのが典型です。
ただし、書類の補正が必要になった場合や、書面決議で想定外の反対が出た場合などには、これより長くかかることがあります。
個人再生委員が選任された場合は、さらに長くなり、概ね5〜6か月程度を要することが多いとされています。
返済開始まで含めると、弁護士への依頼からおおむね4〜5か月後に返済がスタートするイメージです。
| フェーズ | 期間の目安(大阪地裁・弁護士代理人) |
|---|---|
| 申立 → 手続開始決定 | 約2週間 |
| 手続開始決定 → 債権届出期間終了 | 約4週間 |
| 再生計画案提出 → 書面決議終了 | 約4週間 |
| 申立 → 認可決定(合計) | 概ね3〜4か月 |
| 認可決定 → 返済開始 | 確定後、概ね翌月から |
よくあるご質問
Q1. 個人再生の手続き中、返済はどうなりますか?
弁護士が受任通知を送付した後は、各債権者への返済を一時的に止めることが一般的です。手続き期間中は返済を止め、認可決定の確定後に再生計画に基づく返済を再開します。ただし、住宅ローンがある場合など、手続きによって異なる取扱いがあります。詳しくは弁護士にご確認ください。
Q2. 書類の準備はどのくらい大変ですか?
必要書類の種類は多く、取得に時間がかかるものもあります。特に、直近2年分の通帳のコピーや残高証明書などは、早めに準備を始めることをお勧めします。弁護士から「書類チェックリスト」をお渡しして、一つひとつ確認しながら進めますのでご安心ください。
Q3. 書面決議で反対が出たらどうなりますか?
小規模個人再生で書面決議が否決された場合、給与所得者等再生に切り替えて再申立を行うことができます。当事務所でも、書面決議で反対が出たケースで、給与所得者等再生に切り替えて無事に認可を得た経験があります。
Q4. 仕事を続けながら手続きできますか?
はい、可能です。個人再生の手続きは、基本的に弁護士が代理人として進めます。ご本人が裁判所に出向く機会は原則としてありません。必要書類の準備や弁護士との打合せはありますが、日常生活や仕事を続けながら進めていただけます。
Q5. 個人再生の手続き中に収入が減ったらどうなりますか?
手続き中に収入が大きく減少した場合は、速やかに弁護士にご連絡ください。再生計画の内容に影響が出る可能性があるため、早めの対応が重要です。
Q6. 住宅ローンがある場合、手続きはどう変わりますか?
住宅ローンがある場合は「住宅資金特別条項」を利用することで、自宅を手放さずに個人再生を進められる場合があります。手続きの流れは基本的に同じですが、住宅ローン債権者との調整が加わります。詳しくは「個人再生で住宅ローンはどうなる?住宅資金特別条項をわかりやすく解説」をご参照ください。
弁護士としてお伝えしたいこと
個人再生の手続きをサポートしていて、最も気になるのが「書類の準備の遅れ」です。
弁護士が申立を行っても、必要書類が揃わなければ手続きは先に進みません。「そのうち準備しよう」と後回しにしていると、気づけば数か月が経ってしまうことがあります。
特に、通帳のコピーや残高証明書など、金融機関に請求して取得するものは、発行までに時間がかかる場合があります。弁護士からお願いした書類は、できるだけ早めにご対応いただくことが、手続き全体をスムーズに進めるうえで一番大切なことです。
もうひとつお伝えしたいのは、「一人で抱え込まないでほしい」ということです。書類の準備が思うように進まないとき、不安なことが出てきたとき、遠慮なく弁護士に相談してください。手続きは、弁護士とあなたが一緒に進めるものです。
まずは状況を整理することから始めましょう
個人再生の手続きは、決して難しいものではありません。ただ、正確な情報と適切なサポートがあってこそ、スムーズに進められます。
「まず自分の状況が個人再生に向いているのか確認したい」という段階でも、ぜひあゐ法律事務所にご相談ください。
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あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士
大阪弁護士会所属
【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。