解決事例
2026/05/03 2026/05/04

「また相談してもいいですか」:二度目の任意整理と、もう一度立ち直る勇気

解決事例


はじめに

電話口の声は、小さく、ためらいがちでした。

「以前、任意整理でお世話になった者なのですが… また、ご相談してもよいでしょうか」

数年前に、借金の問題を一緒に解決した方でした。最初の任意整理による分割支払いはしっかり終えられていました。

その方から再び連絡をいただいたとき、私の中に「またか」という気持ちは、正直なところ一切ありませんでした。むしろ、以前依頼を受けたときのその方の人柄を思い出し、「よほどの事情があったんだろう」と思ったのでした。


再び借金を抱えるまで

その方は、ごくごく普通の家庭をお持ちで、家計を支えるために共働きをされていて、以前の任意整理による返済を地道に続け、しっかりと払い終えられていました。

しかし、しばらくして配偶者の収入が減少しました。大きな変化とまでは言えなかったものの、月々の生活費を安定して賄うには足りなくなってしまいました。

「少しだけ」という気持ちで再び借入れをするようになり、それが重なって、気づけば複数の業者からの借入れへと膨らんでいきました。浪費したわけでも、特別なものを買ったわけでもない。家族のために、ただ生活費を補うためだけの借入れでした。


「また相談してもいいのか」という迷い

その方が再び私に連絡してくるまでには、相当の時間とためらいがあったと思います。

一度、弁護士の力を借りて借金問題を解決できたのに、再び同じ状況に陥ってしまった。そのことを深く恥じていると、連絡の際に伝えてくださいました。「また同じ先生に頼むのは申し訳ない」という気持ちもあったようです。

それでも、もうこれ以上は自分の力では返済を続けられない、という限界が来たとき、もう一度連絡する決断をされました。その勇気は、決して小さなものではありません。


やむを得ない事情は誰にでもある

弁護士として、長年多くの方の債務整理を担当してきました。その経験から言えることがあります。

二度目の相談に来られる方には、よほどの理由があります。浪費や衝動買いで再び借金を重ねた、というケースももちろんあります。しかし多くは、予期せぬ収入の変化、家族の病気、突発的な出費など、本人の意志ではどうにもならない事情が積み重なった結果、借金がまた増えてしまった、というケースです。

この方の場合も、まさにそうでした。配偶者の収入減という家庭の事情が根底にあり、生活を守るためにやむを得ず借入れを重ねてしまった。それを責める気には、まったくなれませんでした。

人生において、どれだけ誠実に生きていても、思いどおりにならないことは起きます。大切なのは、そこから先をどうするかです。一人で抱え込まず、専門家の力を借りて問題を修正することができるなら、それは弱さではなく、むしろ賢明な判断だと私は思っています。


手続きの選択と交渉の経過

相談を受け、借入先と金額を確認しました。業者数は少なく、いずれも生活費を補うための消費者金融からの借入れでした。

収入の状況を確認すると、利息をカットし、月々の返済額を無理のない水準に抑えることができれば、ご自身の収入だけで十分に完済できる見通しが立ちました。個人再生や自己破産を選択する必要はなく、任意整理で解決できると判断しました。

各債権者との交渉は、いずれも大きな困難なく進みました。利息のカットと分割弁済の条件を取り付け、毎月の返済額はそれまでの借入れ状況に比べて大幅に減らすことができました。


解決と再出発の言葉

任意整理の手続きが整い、分割支払いの計画が確定したとき、その方は、「今度こそしっかり家計を管理して、二度とこのようなことにならないよう、自分のためにも家族のためにも頑張りたい」と言ってくださいました。

追われるような返済生活から脱し、毎月の生活に少しずつ余裕が生まれた。その安堵感が、言葉の端々から伝わってきました。

その言葉を聞いて、改めてこの仕事をしていてよかった、としみじみ思いました。


この事件を振り返って

二度目の相談というのは、依頼者にとって相当な覚悟が必要だと思います。一度助けてもらった弁護士に、再び同じ問題で頭を下げに行く。その心理的なハードルは、初回の相談よりもずっと高いかもしれません。

それでも連絡してきてくれた、というのは、僭越ながら、私に対する信頼があったからだと思っています。それが嬉しかったし、もし一人で抱え込んだまま時間が過ぎていたら、限界まで追い詰められていたかもしれない、とも感じました。

この仕事を通じて、つくづく感じることがあります。債務整理は、制度や理屈だけではない、ということです。その人がどういう経緯でその状況に至ったのか、どうしたら次こそ立て直せるのか。それを一緒に考えることこそが、私の仕事だと思っています。

誰にでも、まちがいやつまづきはあります。それを一人で解決しようとするよりも、専門家の力を借りて確実に修正することのほうが、はるかに大切です。もし「また相談してもいいのだろうか」と迷っているなら、どうか遠慮なく、連絡してください。

もし、他の弁護士に以前頼んだのと同じことでその弁護士にどうしても相談できない、というときもご相談ください。私が引き受けることもできると思いますし、内容によってはその弁護士にこういう形で尋ねてみたらどうですか、とアドバイスできることもあると思います。


あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士たけうちよしじ
大阪弁護士会所属

【免責事項】本記事は、実際に取り扱った事案をもとに、依頼者のプライバシーに配慮して事実関係の一部を抽象化・再構成したものです。本文中の発言・やり取りの描写は、当時の経緯をもとに再構成したものであり、当時の言葉そのものを引用したものではありません。個別の事情により手続の進み方や結果が異なります。掲載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や運用変更により取扱いが異なる場合があります。具体的な事情については個別に弁護士へご相談ください。

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