
「個人再生で借金がいくらになるのか」気になっていませんか?
「借金を大幅に減らせると聞いたけど、実際いくらになるの?」
「借金が5分の1になるって本当?自分の場合はどうなる?」
「財産があると返済額が増えると聞いて、不安になっている」
結論からお伝えすると、個人再生で返済すべき金額(最低弁済額)は、①借金の総額に応じた法定基準額と、②手持ち財産の合計額(清算価値)という2つの基準のうち、高い方が採用されます。
「5分の1になる」という情報だけが一人歩きしていますが、それはあくまで法定基準額の一例にすぎません。財産の状況によっては返済額がそれを大きく上回ることもあります。この記事では、2つの基準をそれぞれ丁寧に解説したうえで、具体的な計算例を示してみます。
最低弁済額を決める2つのルール
個人再生の最低弁済額は、民事再生法の規定に基づいて決まります。具体的には次の2つのルールが適用され、いずれか高い方が最終的な返済額となります。
ルール① 借金総額に応じた法定基準額(民事再生法231条2項)
借金の総額に応じて、段階的に最低弁済額が定められています。
ルール② 清算価値保障原則(民事再生法231条1項・174条2項4号)
手持ち財産を今すぐ換金した場合の合計額(清算価値)を下回る返済計画は認められません。
この2つを理解することが、個人再生の返済額を正確に把握するための第一歩です。
ルール① 借金総額に応じた法定基準額
民事再生法231条2項は、住宅ローンを除いた借金の総額に応じて、次のように最低弁済額を定めています。
| 借金の総額(住宅ローンを除く) | 最低弁済額 |
|---|---|
| 100万円未満 | 全額 |
| 100万円以上500万円以下 | 100万円 |
| 500万円超1,500万円以下 | 借金総額の5分の1 |
| 1,500万円超3,000万円以下 | 300万円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 借金総額の10分の1 |
※個人再生を利用できる借金の総額の上限は5,000万円(住宅ローンを除く)です。
たとえば借金の総額が300万円であれば、法定基準額は100万円です。これを原則3年(最長5年)で分割返済します。月額に換算すると、3年返済なら月約2万7,800円という計算になります(端数は最終回に調整)。
「借金が5分の1になる」という表現は、借金が500万円超1,500万円以下の場合に当てはまるものです。それ以外の金額帯では割合が異なりますので注意が必要です。
ルール② 清算価値保障原則
清算価値保障原則とは、「もし今すぐ自己破産して財産をすべて換金したとすれば、債権者が受け取れる金額」を下回る返済計画は認められない、というルールです(民事再生法231条1項・174条2項4号)。
要するに、「破産するより個人再生のほうが債権者にとって不利にならない」ことを担保するしくみです。
手持ち財産が少なければ清算価値も低くなり、ルール①の法定基準額が最低弁済額となります。しかし財産が多い場合は清算価値がルール①の金額を上回ることがあり、その場合は清算価値のほうが最低弁済額となります。
清算価値に算入される主な財産
清算価値を計算するうえで、依頼者が「えっ、これも含まれるの?」と驚かれることが少なくありません。主なものを整理します。
現金・預貯金
申立時点の残高が原則として算入されます。裁判所によっては現金・預金の一定額を控除する運用をとる場合がありますが、具体的な取扱いは弁護士に確認することをお勧めします。
生命保険の解約返戻金(解約前でも算入)
保険を解約していなくても、「申立時点で解約した場合に受け取れる返戻金」が財産として算入されます。「解約するつもりはない」という方ほど、この点で驚かれます。解約返戻金は原則として清算価値に計上されますが、具体的な取扱いは裁判所の運用によって異なる場合がありますので、弁護士に確認することをお勧めします。なお、保険会社からの契約者貸付がある場合は、返戻金から貸付残高を差し引いた純額が対象となります。
退職金見込額(在職中でも算入される場合がある)
退職する予定がなく、退職金をまだ受け取っていない段階であっても、「今退職したら受け取れるであろう金額」が財産として算入されることがあります。
| 退職の状況 | 清算価値への計上割合 |
|---|---|
| 退職予定なし | 見込額の8分の1 |
| 退職済み、退職金未受領または退職予定あり | 見込額の4分の1 |
| 退職済み、退職金受領済み | 全額 |
※見込額が少額の場合に計上しない運用をとる裁判所もありますが、具体的な取扱いは裁判所によって異なります。弁護士に確認することをお勧めします。
公務員や大企業の長期勤続者は退職金が高額になりがちです。たとえば退職金見込額が1,600万円であれば、200万円(1,600万円×8分の1)が清算価値に算入されます。ただし、確定拠出年金(DC)や中小企業退職金共済(中退共)は差押禁止債権に該当するため、清算価値には含まれません。
自宅不動産(アンダーローンの場合)
住宅ローンが残っている自宅については、住宅の時価がローン残債を上回るアンダーローンの場合に、その差額分が清算価値に算入されます。
たとえば自宅の時価が2,000万円、住宅ローン残債が1,500万円であれば、差額の500万円が清算価値に計上されます。住宅資金特別条項を使って自宅を守る選択をした場合でも、このアンダーローン分は清算価値に反映されます。アンダーローンの幅が大きいケースでは、個人再生による減額効果が薄まることがありますので、早い段階で弁護士に試算してもらうことが重要です。
なお、時価評価は固定資産税評価額ではなく不動産業者の査定額が基準となることが多く、査定の結果によってオーバーローンかアンダーローンかが変わる場合もあります。私自身、受任の段階ではオーバーローンと思われていた案件が、調査の結果アンダーローンであることが判明し、依頼者の返済負担が当初の見込みより増えてしまったケースを経験しています。「固定資産税評価額で見ればオーバーローンのはず」という思い込みは禁物です。不動産を保有している場合は、相談の早い段階で査定を取ることを強くお勧めします。
一方、時価がローン残債を下回るオーバーローンの場合は清算価値はゼロとなり、住宅は最低弁済額に影響しません。
過払い金返還請求権
過払い金がまだ業者から返還されていない段階でも、「返還を請求できる権利(回収見込み額)」として清算価値に算入されます。「過払い金がある=得をする」と思っていたところ、その分だけ再生計画の返済額が増えるケースがあります。
清算価値に含まれない主な財産
逆に清算価値に含まれないため、依頼者に安心していただけるケースもあります。
- 確定拠出年金(DC)・中小企業退職金共済(中退共):差押禁止債権のため算入なし
- 時価20万円以下の車両:自由財産として除外される場合があります(裁判所の運用によって異なります)
- オーバーローン不動産:マイナス部分はゼロとして扱われ、清算価値を下げる方向には働かない
最終的な最低弁済額の決まり方(計算例)
ルール①とルール②のうち高い方が最低弁済額になります。具体例で確認しましょう。
【例1】借金総額300万円・清算価値70万円のケース
| 基準 | 金額 |
|---|---|
| ルール① 法定基準額(100万円以上500万円以下の区分) | 100万円 |
| ルール② 清算価値 | 70万円 |
| 最低弁済額(高い方) | 100万円 |
→ 3年返済なら月約2万7,800円
【例2】借金総額300万円・清算価値150万円のケース
| 基準 | 金額 |
|---|---|
| ルール① 法定基準額 | 100万円 |
| ルール② 清算価値 | 150万円 |
| 最低弁済額(高い方) | 150万円 |
→ 3年返済なら月約4万1,700円
同じ借金総額でも、財産の状況によって返済額が大きく変わります。「財産が多いほど個人再生のメリットが小さくなる」という側面があることは、あらかじめお伝えしておきたい点です。
小規模個人再生と給与所得者等再生で計算方法に違いはあるか
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類がありますが、ルール①(法定基準額)とルール②(清算価値)の計算方法はどちらも同じです。
ただし、給与所得者等再生にはさらに「可処分所得の2年分以上」という第3の基準が加わります(民事再生法241条2項7号)。手取り収入から最低生活費を差し引いた金額の2年分であり、ルール①・②を上回る場合はさらに返済額が高くなります。
どちらの手続きを選ぶかは、収入の安定性や債権者構成(再生計画案に反対する債権者がいるか、その割合はどうか)なども踏まえて検討する必要があります。個人再生できる条件については、別途詳しく解説いたします。
よくあるご質問
Q1. 借金の「総額」には利息や遅延損害金も含まれますか?
含まれます。元本だけでなく、申立時点までに発生した利息・遅延損害金も債権額に含まれます。受任通知を弁護士が送付した後は、貸金業者等からの直接の取立て行為が禁止され(貸金業法第21条第1項第9号、債権管理回収業に関する特別措置法第18条第8項)、多くの貸金業者は実務上利息の計算も止めるため、早めに弁護士に相談することで債権額の膨張を抑えることができます。なお、銀行や個人からの借入れには同法の適用がない場合があります。
Q2. 個人再生の申立て後に財産が増えた場合はどうなりますか?
清算価値の基準時は原則として再生計画認可決定時とされています。申立て後に退職金を受け取った場合や相続が発生して財産が増えた場合は、清算価値に影響する可能性があります。このような事情が生じた場合は速やかに弁護士にご相談ください。
Q3. 清算価値が法定基準額を大きく上回る場合、個人再生は意味がありますか?
清算価値が高い場合でも、返済期間を3年から最長5年に延長して月々の負担を下げる方法や、不動産の時価査定を複数社で取り直して清算価値を正確に算定し直す方法など、合法的な対処の選択肢があります。それでも減額効果が見込めない場合は、任意整理・自己破産・住宅の任意売却後の個人再生なども含めて比較検討することが重要です。どの手続きが最も有利かは、財産・収入・借金の内訳を総合的に見て判断します。
Q4. 住宅ローンは最低弁済額の計算に含まれないのですか?
住宅資金特別条項を利用する場合、住宅ローンは再生計画による減額対象から外れ、従来どおり返済を続けます。そのためルール①の法定基準額の計算では住宅ローンを除いた借金総額が基準となります。ただし、自宅がアンダーローンの場合はその差額がルール②の清算価値に算入されますので、自宅を守ることで返済額が増える場合があります。住宅資金特別条項の詳しいしくみと注意点については、別途詳しく解説いたします。
弁護士としてお伝えしたいこと
個人再生の相談を受けていると、「借金が5分の1になると聞いてきました」とおっしゃる方が多くいらっしゃいます。その期待が完全に外れることはありませんが、財産の状況によっては返済額がそれを上回ることも決して珍しいことではありません。
特に、退職金見込額・保険の解約返戻金・アンダーローンの自宅については、「現金が手元にあるわけではないのに財産扱いになる」という点で多くの方が驚かれます。事前にしっかり試算しておかないと、手続きに入ってから「こんなはずではなかった」という事態になりかねません。
清算価値が高くなった場合でも、合法的な対処の選択肢はいくつかあります。返済期間を3年から5年に延長することで月々の負担を下げる方法、不動産の査定を複数社で取り直して正確な時価を算定する方法、あるいは個人再生ではなく自己破産や任意整理に方針を切り替える判断などです。大切なのは、財産を隠したり過少申告したりするような不正な操作は絶対に避けるべきだということです。それは再生計画の不認可事由に直結します。
私が大切にしているのは、相談の早い段階で財産全体を把握し、清算価値の試算を先に行うことです。返済額が思ったより高くなる場合は、自己破産や任意整理との比較もしっかり行います。「どの手続きが本当に有利か」を一緒に整理することが、弁護士に相談する最大のメリットだと考えています。
まずは状況を整理することから始めましょう
個人再生の最低弁済額は、借金の総額だけでなく財産の状況によっても大きく変わります。「自分の場合はいくらになるのか」を知るためには、財産を一覧にして弁護士に見せていただくことが最初の一歩です。
あゐ法律事務所では、債務整理に関するご相談を随時お受けしています。淀屋橋駅からすぐの場所にありますので、大阪・京阪神エリアの方はお気軽にご連絡ください。弁護士の守秘義務により相談内容が外部に漏れることはありませんし、相談したからといって手続きを進めなければならないというわけではありません。
あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士
大阪弁護士会所属
【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。