コラム
2026/04/22

自己破産か個人再生か、迷ったときの判断基準|ケース別に弁護士が解説

法律の専門家があなたの疑問にお答えします

「どちらを選べばいいか」で悩んでいませんか?

「自己破産か個人再生か、どちらが自分に合っているのかわからない」
「返済できないなら自己破産しかないと思っていたが、本当にそうなのか不安だ」
「財産がある自己破産したら全部取られると聞いた。個人再生なら残せるのか」
「仕事の関係で、手続き中に資格が使えなくなると困る」

こうした悩みを持って相談に来られる方は、非常に多くいらっしゃいます。

結論からお伝えすると、自己破産と個人再生のどちらが適しているかは、収入や返済能力だけでは決まりません。財産の状況・職業・借金の総額・免責不許可事由の有無など、複数の要素が絡み合います。相談の前から「どちらかに決めなければ」と思う必要はありません。

この記事では、15年以上・15,000件超の実務経験から、状況別・ケース別の判断基準をお伝えします。


2つの手続きの本質的な違いを確認しておきましょう

詳細な比較は「個人再生と自己破産どっちを選ぶべき?弁護士が教える判断基準」「任意整理・個人再生・自己破産の選び方」でも解説していますが、まず本質的な違いを簡単に確認します。

  個人再生 自己破産
借金はどうなる 大幅に減額(原則5分の1〜)・残額を返済 原則として全額免除(免責)
財産の扱い 原則として処分不要(清算価値は返済額に反映) 自由財産の範囲を超えるものは処分
収入の要否 継続的な収入が必要 収入がなくても申立て可
職業・資格制限 なし 手続き中は一部制限あり
住宅ローン特則 利用可(自宅を守れる場合がある) 利用不可
手続き期間の目安 6か月〜1年程度 同時廃止:3〜6か月、管財事件:1年前後

清算価値とは

「仮に自己破産した場合に換価(売却)される財産の総額」のことです。自由財産として手元に残せる財産(99万円以下の現金・差押禁止財産など)を除いた、処分対象となる財産を売ったと仮定した場合の価値です。

清算価値保障の原則

個人再生では、返済額の決め方が3つあります。

  • 最低弁済額基準:借金総額に応じた法定最低額(民事再生法231条)
  • 清算価値保障基準:所有財産の清算価値
  • 可処分所得基準:可処分所得の2年分(給与所得者等再生のみ)

このうち最も高い金額が実際の返済額になります。財産が多い方は、最低弁済額より清算価値のほうが高くなることがあり、その場合は清算価値が返済額の基準となります。


個人再生が向いているケース

住宅ローンが残っており、自宅を守りたい

個人再生には「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度があります。これを使うと、住宅ローンの返済を続けながら、その他の借金だけを大幅に減額することができます。

「家だけは残したい」という方にとって、個人再生は非常に重要な選択肢です。自己破産では、住宅ローンが残っている自宅は原則として手放すことになります。

安定した収入があり、借金だけが問題になっている

毎月一定の収入があり、借金さえ整理できれば生活を立て直せる見込みがある場合、個人再生は有力な選択肢です。

減額後の借金を原則3年(最長5年)かけて返済する計画を立て、裁判所の認可を受けて進めます。「借金はゼロにならなくてもいいので、生活を変えずに立て直したい」という方に向いています。

手放したくない財産がある(自由財産の範囲を超えるケース)

これは、実務上よく見落とされているポイントです。

自己破産では、99万円以下の現金や差押禁止財産(日常の家財道具など)が法律上当然に「自由財産」として手元に残せます(破産法第34条第3項)。これに加え、裁判所の裁量により追加の財産を自由財産として拡張することも可能です(同条第4項)。それでも、一定以上の価値がある財産は処分の対象になる場合があります。

個人再生では、財産を処分する必要は原則としてありません。ただし、「清算価値保障の原則」というルールがあり、自己破産したと仮定した場合に処分されるべき財産の価値以上の金額を返済しなければなりません。

つまり、財産が多いほど個人再生での返済額は上がります。それでも、財産を手放さずに済む点は大きなメリットになる場合があります。

職業・資格の制限を受けたくない

自己破産の手続き中は、弁護士・司法書士・警備員・保険外交員・宅地建物取引士など、一定の職業・資格に制限が生じます(破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまでの期間)。

個人再生にはこのような制限がありません。職業の関係で制限を受けると困る方は、個人再生が選択肢になります。

ギャンブルや浪費など免責不許可事由が心配な方

自己破産では、ギャンブルや浪費による借金は「免責不許可事由」に該当する可能性があります。裁判所の裁量により免責が認められるケースが多くありますが、不安が残る場合は個人再生を検討することがあります。

個人再生には免責不許可事由のような規定がなく、返済計画の要件を満たせば認可されます。

くわしくは「ギャンブルが原因でも自己破産できますか?」もあわせてご参照ください。


自己破産が向いているケース

収入が見込めず、返済計画が立てられない

個人再生は、減額後の借金を分割返済することが前提です。継続的な収入がなければ、原則として利用できません。

失業中・病気療養中・高齢で収入の見込みが立たないなど、返済計画を維持できない状況では、自己破産が現実的な選択肢になります。

財産がほぼなく、手放すものがない

自己破産の「財産処分」を恐れる方は多いのですが、財産がほとんどない場合は実際に処分されるものがほぼないケースが多いです。

賃貸にお住まいで、預貯金も自由財産の範囲内に収まる場合は、自己破産でも生活への影響は最小限に抑えられます。

財産の具体的な扱いについては「自己破産すると家・車・預金はどうなる?」もあわせてご参照ください。

借金総額が非常に多く、個人再生での返済額が現実的でない

個人再生では、借金総額に応じた「最低弁済額」があります(民事再生法第231条)。たとえば借金が500万円の場合、最低弁済額は100万円です。

これに加えて清算価値も返済額に影響するため、借金が多く財産もある程度ある場合には、個人再生の返済額が想定より高くなることがあります。その結果、自己破産のほうが現実的な解決策になるケースがあります。


「自己破産のつもりが個人再生に」:判断が変わるケース

債務整理の依頼を多数お受けしていると、当初の想定と手続きの選択が変わるケースに出会います。

財産の評価をしてみると、自己破産では処分が必要なものが予想以上に多かったというケースがあります。収入や借金総額からは自己破産が適切に思えた案件でも、預貯金・生命保険の解約返戻金・退職金見込み額などを合算すると、自由財産の範囲を超える財産が出てきた、ということがあります。

この場合、自己破産を選ぶと財産を処分しなければなりません。一方、個人再生を選べば財産は手元に残せますが、その分、清算価値として返済額に反映されます。

「財産を処分するよりも、返済額が増えても手元に残すほうがよい」と判断できる状況であれば、個人再生への切り替えを検討することになります。

このように、実際は、収入・返済能力・借金総額という単純な要素だけでは判断できないといえます。弁護士に相談し、財産の評価も含めて状況を整理することが、適切な選択への近道です。


よくあるご質問

Q1. 個人再生か自己破産か、相談の前に決めておく必要がありますか?

決めておく必要はありません。どちらが適しているかは、収入・財産・借金総額・職業など複数の情報をもとに判断します。「自分はどちらになりそうか」という見通しも含めて、相談の場で一緒に整理することができます。

Q2. 個人再生のほうが自己破産より信用情報への影響が小さいですか?

登録される信用情報機関や期間は手続きによって異なりますが、「個人再生のほうが傷が浅い」とは一概には言えません。機関によっては登録期間に大きな差がない場合があります。詳しくは「自己破産と個人再生、ブラックリストの期間は実は同じです」をご参照ください。

Q3. 個人再生を選んだが、途中で返済できなくなったらどうなりますか?

再生計画が認可された後に返済が継続できなくなった場合、再生計画が取り消される可能性があります。その場合、自己破産への切り替えを検討することになります。状況の変化が生じた場合は、早めに担当弁護士に相談することが重要です。

Q4. 任意整理ではなく、個人再生か自己破産かを検討すべき目安はありますか?

任意整理は利息をカットしますが、元金は原則として減りません。利息をなくしても毎月の返済額が収入に対して重すぎる場合、または借金の総額が大きく3年〜5年での分割返済での完済が現実的でない場合は、個人再生や自己破産を検討することになります。「債務整理の選び方」もあわせてご参照ください。


弁護士としてお伝えしたいこと

相談に来られた方に、私がよくお伝えすることがあります。

「どちらにするかは、今日決めなくていいです」

相談に来る前に「自己破産を覚悟してきました」とおっしゃる方は多くいらっしゃいます。その覚悟は尊重しますが、状況を整理してみると別の選択肢が合っている場合があります。逆に、「できれば個人再生で」と思っていても、財産や収入の状況によっては自己破産のほうが現実的な解決になることもあります。

手続きの選択は、状況を正確に把握した後にするものです。「どちらを選ぶか」よりも「今の状況を正確に整理すること」のほうが、ずっと大切です。

相談の場では、現在の収入・財産・借金の状況を丁寧に確認したうえで、複数の選択肢をわかりやすく説明することを大切にしています。あなたが納得して選択できるよう、必要な情報をしっかりお伝えします。


まずは状況を整理することから始めましょう

自己破産と個人再生のどちらが向いているかは、あなたの状況によって異なります。相談したからといって、すぐに手続きを進めなければならないわけではありません。

まずは一度、現在の状況を整理するところから始めましょう。「これからどうするか」を一緒に考える場にできればと思っています。

お気軽にご相談ください。


あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士たけうちよしじ
大阪弁護士会所属

【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。

 

© あゐ法律事務所