コラム
2026/04/25

個人再生できる条件とは?収入の基準と不認可リスクを弁護士が解説

法律の専門家があなたの疑問にお答えします

個人再生が使えるかどうか、気になっていませんか?

「収入が不安定でも個人再生できますか?」
「自営業でも使えますか?」
「借金がいくらまでなら個人再生の対象になりますか?」
「手続きを始めたのに、途中で認められないことはありますか?」

個人再生を検討するとき、「自分は本当に個人再生ができるのだろうか」という不安を感じる方は少なくありません。

結論からお伝えすると、個人再生を利用できるかどうかは、①継続的な収入があること、②借入総額が一定額以下であること、③支払不能のおそれがあること、という3つの条件を満たしているかどうかで判断されます。

この記事では、各条件の具体的な内容と、手続きが認められないリスクについて解説します。


個人再生を利用できる3つの基本条件

個人再生(民事再生法に基づく借金を減額して分割返済する手続き)を利用するには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。

①継続的な収入があること

個人再生では、減額された借金を原則3年(最長5年)かけて返済していきます。そのため、返済を続けられるだけの収入が継続的にあることが前提となります。

「継続的な収入」とは、必ずしも毎月一定額の給与である必要はありません。収入が月によって変動する自営業者やフリーランスの方でも、過去の収入実績を踏まえて返済計画の履行が見込めると判断されれば、個人再生を利用できます。

パートタイムやアルバイトの収入であっても、安定して働き続けられる見込みがあれば対象になります。反対に、現時点では収入があっても、近い将来に収入が途絶えることが明らかな場合は、履行可能性を欠くと判断されることがあります。

②借入総額が5,000万円以下(住宅ローンを除く)であること

個人再生を利用できる借入総額の上限は、住宅ローンを除いて5,000万円以下です(民事再生法221条1項)。

住宅ローンは「住宅資金特別条項」という別のしくみで取り扱われるため、この上限の計算から除外されます。住宅ローン以外の借金(消費者金融・クレジットカード・車のローンなど)の合計が5,000万円を超える場合は、個人再生ではなく自己破産を検討することになります。

③支払不能のおそれがあること

現時点で返済が完全に止まっていなくても、このまま返済を続けると将来的に支払不能になるおそれがあるという状態であれば、個人再生の申立てが認められます(民事再生法21条1項)。

すでに返済が滞っている方はもちろん、毎月の返済は何とかできているが生活が極めて苦しい方や、借り換えや立替えをしながら辛うじて返済を続けている方も、この条件を満たす場合があります。


小規模個人再生と給与所得者等再生の条件の違い

個人再生には、小規模個人再生給与所得者等再生という2種類の手続きがあります。どちらを選ぶかは、収入の性質や債権者の状況によって変わります。

小規模個人再生:自営業者・フリーランスも利用可

小規模個人再生は、継続的な収入があれば誰でも利用できる手続きです(民事再生法221条)。給与所得者はもちろん、自営業者・フリーランス・パートタイムの方も対象になります。

返済額は、法律で定められた最低弁済額(借入総額に応じた基準額)と清算価値(手持ち財産の合計額)のいずれか高い方となります。詳しくは「個人再生の返済額はどう決まる?最低弁済額の計算方法」をご参照ください。

小規模個人再生には、債権者による書面決議というしくみがあります。再生計画案が可決されるには、不同意と回答した債権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その債権額が総債権額の2分の1を超えないことが必要です(民事再生法230条6項)。いずれか一方でも満たさない場合は、再生計画が否決されます。

反対債権者数 反対債権額 結果 備考
半数未満 2分の1以下 ✅ 可決 2要件をともに満たす場合のみ可決
半数以上 問わない ❌ 否決 反対債権者数が半数以上で否決
問わない 2分の1超 ❌ 否決 反対債権額が2分の1超で否決

給与所得者等再生:安定した定期収入が必要

給与所得者等再生は、給与やこれに類する定期的な収入を得ており、その額の変動が小さいことが条件です(民事再生法239条1項)。主に会社員や公務員など、雇用関係に基づく安定収入がある方が対象です。

給与所得者等再生には、書面決議がありません。債権者の反対で否決されるリスクがない点は大きなメリットです。

ただし、返済額の計算に可処分所得要件が加わります。可処分所得とは、年収から税金・社会保険料・生活費の基準額を差し引いた金額です。再生計画の返済総額は、この可処分所得の2年分以上でなければなりません(民事再生法241条2項7号)。

収入が多い方の場合、この可処分所得要件によって、小規模個人再生の最低弁済額よりも返済総額が増えることがあります。

書面決議リスクが選択の分かれ目になることがある

当事務所の経験では、特定の1社からの借入れが総債権額の2分の1を超えており、かつその会社が書面決議で必ず反対する方針を持っていたケースがありました。このケースでは小規模個人再生が否決され、給与所得者等再生に切り替えて再度申立てを行いました。

収入が十分にある方でも、可処分所得要件によって返済総額が増えることがあります。どちらの手続きが有利かは、借入先の構成や収入状況によって異なるため、弁護士と慎重に検討することをお勧めします。


個人再生が認められないケースとリスク

書面決議で否決された場合

小規模個人再生では、債権者の書面決議で否決されることがあります。この場合、給与所得者等再生への切り替えによる再申立てが現実的な対処法です。ただし、給与所得者等再生を利用するには、定期収入の安定性という別の条件を満たす必要があります。

再生計画案が法律の基準を満たさない場合

最低弁済額を下回る返済計画や、返済期間が5年を超える計画は認可されません。裁判所の審査で計画の修正を求められることがあります。

手続き中に収入が途絶えた場合

個人再生の手続き中に解雇・廃業などで収入が大幅に減少・消滅した場合、履行可能性がないと判断されて手続きが廃止となることがあります(民事再生法191条等)。収入に変化があった場合は、速やかに弁護士に連絡することが重要です。

書類の不備・虚偽申告

申立て書類に不備があったり、財産や収入を意図的に隠したりした場合、申立て時であれば手続きの棄却や開始後の廃止につながることがあります。認可後に虚偽申告が発覚した場合は、再生計画の取消になることもあります(民事再生法189条以下)。


個人再生を利用できるか確認するチェックリスト

以下の項目に当てはまるか、まず確認してみてください。

項目 確認内容 備考
継続的な収入がある(または見込める) 自営・パートも対象になる場合あり
住宅ローンを除く借入総額が5,000万円以下 超える場合は自己破産を検討
このまま返済を続けると支払不能になるおそれがある 現時点で滞納していなくてもよい
非免責債権(税金・養育費など)が大部分を占めていない これらは個人再生でも減額されない
過去7年以内に給与所得者等再生または自己破産の免責を受けていない 給与所得者等再生のみの制限(小規模個人再生には回数制限なし)

⑤は給与所得者等再生の利用制限です(民事再生法239条5項2号)。小規模個人再生には回数制限はありません。


不認可・否決された場合の次の選択肢

個人再生が認められなかった場合や、手続きを進める中で条件を満たさないことが判明した場合、主に次の選択肢があります。

自己破産への切り替えは、継続収入の見込みがない場合や、書面決議で否決され給与所得者等再生も利用できない場合に検討します。自己破産は個人再生と異なり、継続収入がなくても申立てができます。詳しくは「自己破産か個人再生か、迷ったときの判断基準」をご参照ください。

任意整理への切り替えは、借入先が少なく、一部の債権者との交渉で解決できる見込みがある場合に検討します。

どの手続きに切り替えるかは、借入先の数・収入状況・財産の有無によって異なります。弁護士と状況を整理したうえで判断することをお勧めします。


よくあるご質問

Q1. ギャンブルが原因の借金でも個人再生はできますか?

A. はい、できます。ギャンブルによる借金は、自己破産では免責不許可事由に該当する可能性がありますが、個人再生においては不認可の直接的な理由にはなりません。個人再生は「借金の原因」ではなく「返済の継続可能性」を重視する手続きです。ただし、ギャンブルを継続したままでは返済計画の履行が困難と判断されることがありますので、手続き前に状況を整理することが重要です。なお、自己破産とギャンブルの関係については「ギャンブルが原因でも自己破産できますか?」もご参照ください。

Q2. 個人再生の手続き中に転職や退職をしても問題ありませんか?

A. 転職自体は直ちに問題になりませんが、収入が大幅に変動する場合は速やかに弁護士に連絡してください。再生計画案の作成前であれば計画内容の修正が可能です。認可後に収入が著しく減少した場合でも、やむを得ない事由で再生計画の遂行が著しく困難になったと認められるときは、返済期間の延長(最長2年)を申立てることができます(民事再生法234条1項・244条)。ただし、自己都合退職など予測可能な収入変動は要件を満たさない場合があります。

Q3. 住宅ローンがある場合、個人再生はできますか?

A. はい、できます。住宅ローンがある場合は「住宅資金特別条項」を利用することで、住宅ローンの返済を継続しながら他の借金を大幅に減額することができます。ただし、一定の適用条件がありますので、詳しくは弁護士にご確認ください。

Q4. 自営業で収入が不安定ですが、個人再生を使えますか?

A. 収入が不安定でも、過去の収入実績を踏まえて返済計画の履行が見込めると判断されれば、個人再生を利用できます。自営業者・フリーランスは給与所得者等再生は利用できませんが、小規模個人再生の対象になります。収入状況については、弁護士に詳しく相談してみてください。

Q5. 借入先が1社だけでも個人再生はできますか?

A. 手続き上は可能ですが、借入先が1社だけの場合、小規模個人再生では書面決議で否決されるリスクがあります。その場合、給与所得者等再生への切り替えを検討することになりますが、可処分所得要件によって返済総額が増えることもあります。借入先が1社のケースは、任意整理での解決が適している場合もありますので、弁護士と比較検討することをお勧めします。


弁護士としてお伝えしたいこと

個人再生の相談をお受けしていると、「収入が少ないから使えないのでは」「自営業だから無理では」と、最初から諦めている方に出会うことがあります。

しかし実際には、収入の形態や金額だけで判断できないケースが多くあります。過去の収入実績を踏まえて履行可能性を説明し、問題なく手続きが進んだケースも経験しています。

一方で、収入が十分にあっても、借入先の構成や債権者の方針によっては、想定より返済総額が増えることもあります。「収入があるから安心」とは言い切れない側面もあるのが個人再生の現実です。

「自分は使えるのかどうか」という疑問は、一度弁護士に状況を整理してもらうことで、かなりの精度で答えが出ます。条件に不安がある方ほど、早めにご相談いただくことをお勧めします。

なお、個人再生と自己破産のどちらが適しているかについては、「自己破産か個人再生か、迷ったときの判断基準」もあわせてご参照ください。


まずは状況を整理することから始めましょう

個人再生を利用できるかどうかは、収入・借入総額・借入先の構成・財産の状況など、複数の要素を組み合わせて判断します。「条件を満たしているか不安」「自分のケースで使えるか知りたい」という方は、まず弁護士に現在の状況をお話しください。

あゐ法律事務所では、大阪・京阪神エリアを中心に、債務整理に関するご相談をお受けしています。15年以上・15,000件超の取扱い実績をもとに、あなたの状況に合った手続きをご提案します。

まずはお気軽にお問い合わせください


あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士たけうちよしじ
大阪弁護士会所属

【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。

 

© あゐ法律事務所