
手続きの流れが気になっていませんか?
「自己破産を考えているけれど、どんな手続きをするのか分からなくて不安」
「管財人面接や債権者集会って何をするのか全く分からなくて怖い」
「免責審尋で裁判官に何を聞かれるのか、想像するだけで緊張する」
自己破産を検討されている方から、このようなお声をよくいただきます。
手続きの流れが分からないまま進めることほど、不安なことはありません。逆に言えば、何がどの順番で起きるのかを事前に把握しておくだけで、同じ手続きでも心持ちがずいぶん変わります。
結論からお伝えすると、自己破産の手続きは、大きく「申立前」「申立後(同時廃止)」「申立後(管財事件)」の3つのフェーズに分かれます。 怖く感じるポイントのほとんどは、事前に知っておくことで落ち着いて対応できます。
この記事では、弁護士への相談から免責決定が出るまでの全ステップを、実務の視点を交えながら丁寧に解説します。
ステップ①弁護士への相談・受任
まず弁護士に相談し、自己破産が適切かどうかの判断を受けます。相談の結果、自己破産で進めることが決まれば、弁護士との委任契約(受任)となります。
受任後、弁護士は各債権者(消費者金融・銀行・カード会社など)に受任通知を送付します。これにより、貸金業者やサービサーからの取立て・督促が止まります(貸金業法第21条第1項第9号・サービサー法第18条第8項)。ただし、銀行や個人からの借入れについては、これらの法律の適用対象外となりますのでご注意ください。
受任後にやってはいけないこと
受任後から申立てまでの間は、いくつかの点に注意が必要です。
特定の債権者への優先返済は厳禁です。
たとえば、家族や知人への借金を「親しいから先に返したい」と返済してしまうと、他の債権者との公平性を欠く行為(偏頗弁済)として問題になります。家族への返済も例外ではありません。
新たな借入れも避けてください。
受任後に借入れを行うと、免責不許可事由になる場合があります。
財産の処分・隠匿も禁止です。
破産財団に属する財産を隠したり、贈与したりすることは詐欺破産罪(破産法第265条)にあたる場合があり、免責が許可されなくなることがあります(破産法第252条第1項第1号)。
ステップ②申立書類の準備
受任後、弁護士と一緒に申立てに必要な書類を揃えていきます。主な書類は以下の通りです。
- 債権者一覧表(借入先・残高・利率の一覧)
- 財産目録(預貯金・不動産・保険・車など)
- 収支の状況に関する書類(給与明細・家計収支表など)
- 陳述書(借金が増えた経緯の説明)
- 過去2〜3年分の通帳のコピー
中でも陳述書は重要です。借金が増えた時期・原因・経緯を正直に記載することが求められます。ギャンブルや浪費が含まれる場合でも、隠さずに記載することが大切です。隠そうとしても通帳の履歴を見れば分かります。正直に向き合うことが、免責への最短ルートです。
書類の準備期間は、財産状況や債権者数によって異なりますが、おおむね1〜3か月程度かかることが多いです。
ステップ③裁判所への申立て
書類が整ったら、弁護士が裁判所に申立書を提出します。
申立てを受けた裁判所は内容を審査し、通常は数日から数週間以内に破産手続開始決定を出します。この時点から申立人は正式に「破産者」となり、いくつかの制限が生じます。
手続き開始後の制限事項
居住・移転の制限
破産手続中に居住地を離れる場合は、裁判所の許可が必要です(破産法第37条第1項)。実務上は、まず破産管財人に事前に連絡・了解を得たうえで、裁判所へ申立てを行うことになります。引越しや出張・旅行の際にも事前に弁護士へご相談ください。
郵便物の転送
管財事件の場合、破産者宛ての郵便物が破産管財人に配達されます。管財人が内容を確認し、破産財団に関するものかどうかを調査します(破産法第81条・第82条)。
説明義務
破産者は破産管財人等の請求に応じて破産に関し必要な説明をしなければなりません(破産法第40条)。説明を拒んだり偽った説明をした場合は、刑事上の処罰を受けたり、免責が許可されなかったりする場合があります(破産法第252条第1項第11号)。
なお、破産手続開始決定が出ると、KSC(全国銀行個人信用情報センター)に「破産手続開始決定」として登録されます。JICCについては申立の段階で、CICについては免責決定後に加盟会社経由で登録される場合があります。各機関の登録期間の詳細は、「自己破産と個人再生、ブラックリストの期間は実は同じです」をご覧ください。
ステップ④同時廃止か管財事件かの振り分け
破産手続開始決定と同時に、または開始直後に、手続きの種類が決まります。
- 同時廃止:目立った財産がなく、管財人を選任するほどの財産もない場合に選ばれます。手続きが比較的シンプルで、費用も抑えられます。
- 管財事件(少額管財):処分すべき財産がある場合や、免責不許可事由の調査が必要な場合に選ばれます。破産管財人が選任され、財産の調査・換価を行います。
どちらの手続きになるかによって、その後のステップが変わります。同時廃止と管財事件の違いについては、「自己破産の同時廃止と管財事件の違いとは?振り分け基準を弁護士が解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
ステップ⑤管財人面接(管財事件の場合)
管財事件になった場合、破産管財人との面接が行われます。
多くの方が「何を聞かれるのか分からなくて怖い」とおっしゃいます。 しかし、事前に準備しておけば、落ち着いて臨むことができます。
面接では、まず管財人から手続き中の注意事項(居住制限・郵便転送・説明義務など)の説明があります。その後、財産の状況や借金が増えた経緯について確認が行われますが、管財人によって進め方はさまざまです。直接申立人に質問する管財人もいれば、代理人弁護士に事前照会をかける管財人もいます。
対応の基本は3つです。
- 分かる範囲で正直に話す
- 分からないことは、同席している申立代理人(弁護士)が回答する
- 確認が必要なことは、持ち帰って後日報告することも可能
申立代理人である弁護士は面接に同席します。一人で全てを答えなければならないわけではありませんので、安心してください。
ステップ⑥債権者集会(管財事件の場合)
管財事件では、破産管財人が業務の経過と財産の状況を報告する債権者集会が開かれます。
「集会」という言葉から、大勢の債権者に囲まれて責められるようなイメージを持つ方もいらっしゃいます。しかし実際は、債権者が出席することはごくまれで、申立人が債権者から直接何かを聞かれることはほとんどありません。
管財人の報告が中心で、代理人弁護士も意見を求められますが「特に意見なし」となることが多く、あっという間に終わります。終わった後、申立人の多くが「思っていたより全然短かった」と拍子抜けされます。
ステップ⑦免責審尋
免責審尋は、裁判所が免責を許可するかどうかを判断するための手続きです。
同時廃止の場合は、それまで申立人が裁判所と直接接する機会がほとんどないため、基本的に呼び出しがあります。大阪地裁では、数名から15名程度の申立人が一堂に会して行う集団免責審尋の形式で実施されることが多いです。免責不許可事由の有無などによって、個別に呼び出される場合もあります。
審尋では、以下のような内容が確認されます。
- 負債を負った経緯
- 免責不許可事由(ギャンブル・浪費など)がある場合は、反省しているかどうか
- 今後の経済的な立て直しに向けた諸注意
免責不許可事由がなく、手続きに問題がない場合は、書面のみで手続きが進むこともあります。
管財事件の場合は、管財人の調査を経て、最終の債権者集会において免責の可否が判断されます。同時廃止のような独立した免責審尋期日は、通常設けられません。
ステップ⑧免責決定
審尋を経て、裁判所が免責決定を出します。これにより、対象となった借金の返済義務がなくなります。
免責決定が確定すると、いよいよ新しい生活のスタートです。
信用情報への登録はすでに手続きの途中から始まっており、免責決定後も一定期間は続きます。各機関の登録期間については、「自己破産と個人再生、ブラックリストの期間は実は同じです」で詳しく解説しています。
手続き期間の目安
| 種類 | 申立から免責決定まで |
|---|---|
| 同時廃止 | おおむね3〜6か月程度 |
| 管財事件(少額管財) | おおむね6か月〜1年程度 |
手続きごとの詳しい期間については、「債務整理の手続き期間はどれくらい?」もあわせてご参照ください。
よくあるご質問
Q1. 弁護士に相談してから申立てまで、どのくらいかかりますか?
書類の準備状況によりますが、おおむね1〜3か月程度が目安です。財産が多い場合や、債権者数が多い場合は、もう少し時間がかかることがあります。
Q2. 管財人面接に弁護士は同席してくれますか?
はい、申立代理人として弁護士が同席します。分からないことは弁護士が補足して回答することができますので、一人で全てを答えなければならないわけではありません。
Q3. 仕事や家族に手続きが知られることはありますか?
原則として、手続きの内容が職場や家族に直接通知されることはありません。ただし、官報に公告される、保証人に影響が及ぶなどのケースは起こり得ます。詳しくは「自己破産すると家族に影響はある?」をご覧ください。
Q4. 免責不許可事由があると絶対に免責されませんか?
免責不許可事由があっても、裁判所の裁量により免責が認められる場合があります(裁量免責)。ギャンブルや浪費が原因であっても、手続き後に反省の姿勢を示し、家計の立て直しに取り組んでいれば、免責につながることがあります。ただし、免責が必ず認められるとお約束することはできません。詳しくは弁護士にご相談ください。
Q5. 自己破産の相談前に準備しておくことはありますか?
借入先と残高の一覧、直近の収入状況が分かる書類(給与明細など)を事前に整理しておくとスムーズです。詳しくは「自己破産を相談する前に準備すること」をご参照ください。
弁護士としてお伝えしたいこと
自己破産の手続きを前に、「何が起きるか分からなくて怖い」とおっしゃる方は少なくありません。
管財人面接で何を聞かれるか、債権者集会でどうなるか。想像するだけで不安になる気持ちは、よく分かります。
ただ、実際に手続きを終えた方のほとんどから、「思っていたより全然大変じゃなかった」というお声をいただきます。特に債権者集会は、拍子抜けするほどあっという間に終わることが多いです。
私が大切にしているのは、こうした「知らないことへの不安」を事前に取り除くことです。管財人面接・債権者集会・免責審尋でどんなことが行われるか、何を聞かれやすいかを事前にお伝えするようにしています。
分からないことは正直に分からないと言っていただいてかまいません。代理人として同席していますから、必要なときは私が補足します。一人で全部抱え込まなくていいのが、弁護士に依頼する意味のひとつです。
手続きは確かに複数のステップを経ますが、一つひとつは決して難しいものではありません。あなたが安心して新しい一歩を踏み出せるよう、丁寧にサポートします。
まずは状況を整理することから始めましょう
自己破産を検討されているなら、まず現状を整理することが大切です。借入先・残高・毎月の収支を確認し、弁護士に相談することで、手続きの流れや費用の見通しが具体的に見えてきます。
「相談したら依頼して申立てまでしなければならない」ということはありません。相談だけで終わることも可能ですし、他の方法(任意整理・個人再生)が適切であれば、そちらをお勧めすることもあります。
あゐ法律事務所では、初回相談から丁寧にお話を伺い、あなたに合った解決方法をご提案します。まずはお気軽にご連絡ください。
あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士
大阪弁護士会所属
【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。