
自己破産を考えているけれど、先が見えない
「自己破産すると、どんな手続きになるのか」
「費用がどれくらいかかるのか、まったくわからない」
「管財人というものが関わると聞いたが、何をされるのか怖い」
「自分の場合は時間がかかるのか、早く終わるのか知りたい」
こうした不安をお持ちのあなたに向けて、この記事では自己破産の2つのルート、同時廃止と管財事件(少額管財)の違いをできるだけわかりやすくご説明します。
どちらのルートになるかによって、費用・期間・手続きの負担が大きく変わります。ご自身がどちらに当たるかの目安も含めてお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
自己破産には2つのルートがある
結論からお伝えすると、自己破産の手続きには大きく分けて「同時廃止」と「管財事件(少額管財)」の2種類があります。
裁判所は申立てを受けた後、事案の内容に応じてどちらのルートで進めるかを決定します。申立てる側がルートを選べるわけではありません。
それぞれの特徴を簡単にまとめると、次のようになります。
| 同時廃止 | 管財事件(少額管財) | |
|---|---|---|
| 対象 | 財産がほとんどない・免責不許可事由がない | 一定の財産がある・調査が必要な事情がある |
| 破産管財人 | 選任されない | 選任される |
| 費用(予納金目安) | 約1万3,046円 | 引継予納金 約21万6,000円+官報公告費用等(合計 約24万円台〜) |
| 期間の目安 | 申立てから免責まで3〜6か月程度 | 申立てから免責まで6か月〜1年程度 |
同時廃止とは何か
同時廃止とは、破産手続きの開始と同時に破産手続きを廃止する決定が出される手続きです。
財産がほとんどなく、債権者に配当できる財産がない場合、管財人を選任して財産調査・換価・配当を行う意味がありません。そのため裁判所は、手続き開始と同時に廃止を決定し、その後の免責手続きに進む形をとります。
破産管財人が選任されない分、費用・期間ともに管財事件より抑えられるのが特徴です。
同時廃止になる主な条件
- 現金・預貯金・解約返戻金などの財産が概ね20万円以下
- 免責不許可事由(ギャンブル・浪費・虚偽申告など)に該当する事情がない、または軽微
- 収入・支出の状況が比較的シンプルで、特別な調査が不要
これらの条件をすべて満たす場合に同時廃止が選ばれる可能性が高くなります。
管財事件(少額管財)とは何か
管財事件とは、裁判所が破産管財人を選任して進める手続きです。管財人は中立な立場の弁護士が就任し、財産の調査・換価・配当を行い、免責不許可事由の有無を検討します。
大阪地裁では、申立代理人として弁護士が就いている個人の破産案件では、通常管財事件ではなく少額管財という運用が取られています。少額管財は、通常管財に比べて費用・期間を抑えた形で管財手続きを行う制度です。
なお、弁護士が申立代理人として就いていない場合(本人申立てや司法書士による書類作成サポートの場合)は少額管財の対象外となり、通常管財(予納金50万円以上)が必要になります。弁護士に依頼することで費用を大幅に抑えられる理由の一つです。
予納金の目安(大阪地裁・令和8年4月時点)
| 手続きの種類 | 予納金の目安 |
|---|---|
| 同時廃止 | 約1万3,046円(官報公告費用等) |
| 少額管財(弁護士代理) | 引継予納金 約21万6,000円+官報公告費用等(合計 約24万円台〜) |
| 通常管財(本人申立て・司法書士による書類作成サポートの場合を含む) | 最低50万円以上 |
※事案によって変動します。詳細は相談時にご確認ください。
振り分けの基準:どちらになるかを決めるもの
申立て後、裁判所がどちらのルートで進めるかを判断します。主な基準は以下の3点です。
1. 財産の有無(複数の目安がある)
財産の種類によって判断基準が異なります。一般的には以下の2段構えで考えるとわかりやすいです。
- 換価対象の財産全般(解約返戻金・退職金見込額・不動産など):概ね20万円超で管財事件になる可能性が高まります
- 現金・預貯金:概ね50万円超が管財事件の目安とされています
ただし、これらの数字は絶対的な基準ではなく、財産の種類や事案全体の内容を踏まえて判断されます。「20万円以下だから絶対に同時廃止になる」とは言い切れません。
2. 免責不許可事由の有無
ギャンブル・過剰投資・浪費・財産の隠匿・虚偽申告など、免責不許可事由に該当する事情があると判断された場合は、管財人が選任されて調査が行われます。
この場合、財産が少なくても管財事件になることがあります。
3. 収支・事案の複雑さ
収入や支出の状況が複雑であったり、特別な調査が必要な事情がある場合も管財事件になります。
管財事件になりやすいケース
私がこれまで対応してきた案件の経験から、管財事件になりやすいケースをご説明します。
ギャンブル・過剰投資・浪費が背景にある場合
日常生活において通常とは異なる支出パターン、たとえばギャンブルや過剰な投資、生活水準に見合わない消費などが通帳記録から確認できる場合、免責不許可事由の調査が必要と判断され、管財事件になるリスクが高まります。
こうした事情がある場合でも、申立書の中で正直に事実を記載し、反省の意を誠実に述べることが重要です。事情を隠すことは後から発覚したときに大きなマイナスになります。裁量免責(破産法252条2項)によって免責が認められるケースも十分にありますので、まずは弁護士に正直にお話しください。
自営業者・個人事業主の場合
自営業者の方は、個人の収支と事業の収支が混在していることが多く、破産申立てに際して廃業も伴うケースが大半です。事業用資産の換価・配当など処理すべき事項が多いため、基本的に管財事件として進むことになります。
法人代表者の場合
法人代表者が個人破産を申し立てる場合、多くのケースで法人の破産申立ても同時に行う必要があります。法人借入れについては代表者が連帯保証人になっていることが通常であり、法人・個人の両方の手続きを並行して進めることになります。法人破産では管財人が必ず就きますので、代表者個人の申立ても管財事件になることが一般的です。
管財事件の手続きの流れ
管財事件になった場合の手続きの概要をご説明します。
破産管財人の役割
管財人は裁判所が選任する中立な弁護士です。申立人の財産を調査・換価して債権者への配当に充てるとともに、免責不許可事由の有無を検討し、裁判所に報告します。
管財人との関係は、その対応スタイルによってさまざまです。必要な書類の提出や面談には誠実に対応することが、手続きをスムーズに進める上でも重要です。私の経験では、高齢の依頼者の方で預貯金が自由財産の基準を超えていたケースにおいて、今後の医療費等の事情を丁寧に説明した結果、管財人が全額の自由財産拡張を認めてくれたことがあります。管財人とのコミュニケーションは、弁護士が代理人として適切に対応します。
管財人との面談では、財産・収支・借入れの経緯などについて確認が行われます。正直に、かつ簡潔に答えることが基本です。
債権者集会
管財事件では、債権者集会が開かれます。債権者集会は、管財人が財産調査・配当の状況を報告する場です。
債権者が実際に出席するかどうかは案件ごとに異なりますが、申立人(破産者)は原則として出席する必要があります。私が関与してきた案件では、経験上、些細と思われる事案でも期日が開かれていました。
手続き期間の目安
少額管財の場合、申立てから免責許可決定まで概ね6か月〜1年程度が目安です。財産の内容や事案の複雑さによってこれより長くなることもあります。
同時廃止を目指すために
申立てに向けて準備する中で、できる範囲で手続きをスムーズに進めるための工夫はあります。
最も重要なのは、早めに弁護士に相談することです。財産状況の整理・書類の収集方法・申立書の記載内容など、事前に対応できることについて弁護士とともに準備を進めることで、手続き全体がスムーズになります。
なお、財産を意図的に処分したり、通帳の記録を操作したりすることは免責不許可事由に直結します。日常の生活費の範囲内での支出は問題ありませんが、それを超えた財産処分は絶対に行わないでください。まとまった支出を伴う場合は、事前に弁護士に相談するとよいでしょう。申立て前の行動も管財人・裁判所の調査対象になります。
よくあるご質問
Q1. 同時廃止と管財事件、どちらになるかは自分で選べますか?
A. 選べません。申立てを受けた裁判所が、財産状況・免責不許可事由の有無・事案の複雑さなどを踏まえて決定します。弁護士から事前に見通しをお伝えすることはできますが、最終的な判断は裁判所が行います。
Q2. ギャンブルが原因の借金でも免責されますか?
A. ギャンブルは免責不許可事由(破産法252条1項4号)に該当する可能性がありますが、それは「免責されない」ことを意味するわけではありません。裁判所は裁量によって免責を認めることができます(同条2項)。正直に申告し、反省の意を誠実に示すことが重要です。詳しくは「ギャンブルが原因でも自己破産できますか?」もあわせてご参照ください。
Q3. 管財事件になると、費用はいくら追加でかかりますか?
A. 大阪地裁で弁護士が代理人として申立てを行う少額管財の場合、引継予納金は約21万6,000円が目安で、官報公告費用等を加えた合計は約24万円台が目安です(令和8年4月時点)。この費用は通常、弁護士費用とは別に裁判所に納める費用です。なお、法テラスの立替制度は弁護士費用が対象であり、予納金は原則として申立人の自己負担となります(生活保護受給中の方は別途ご相談ください)。詳細は相談時にご確認ください。
Q4. 管財人に財産を調べられると、家族にも影響が出ますか?
A. 調査の対象はあくまでも申立人本人の財産です。家族名義の財産は原則として調査・処分の対象になりません。ただし、申立人が家族に財産を移転したと疑われる場合、その経緯について確認が入ることはあります。家族への影響については、「自己破産すると家族に影響はある?」で詳しく解説しています。
Q5. 自己破産の申立てから免責まで、仕事はできますか?
A. 同時廃止・管財事件ともに、一般的な会社員・パート・アルバイトの方は手続き中も仕事を続けることができます。ただし、一定の職業・資格(弁護士・司法書士・警備員など)については、破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまでの間、資格の制限が生じる場合があります。ご自身の職種が該当するかどうかは、相談時に確認してください。
弁護士としてお伝えしたいこと
「管財事件になると聞いて、怖くなってしまった」
そうおっしゃる方が少なくありません。
管財事件は、同時廃止に比べて費用・期間がかかるのは事実です。ただ、管財事件であっても、手続きの「出口」は同じです。免責許可決定が出れば、借金の支払い義務はなくなります。
管財人が選任されるということは、中立な第三者が手続きを適正に管理するということでもあります。正直に対応し、弁護士のサポートのもとで誠実に手続きを進めれば、管財事件であっても無事に免責に至ることができます。
「自分の場合は管財事件になるのではないか」と心配な方も、まずは状況をご相談ください。どちらのルートになりそうかを含めて、一緒に整理することができます。
自己破産全体の手続きの流れについては、改めて詳しく解説いたします。
まずは状況を整理することから始めましょう
自己破産が適切かどうか、同時廃止と管財事件のどちらになりそうかは、借金の状況・財産・収入などによって異なります。任意整理や個人再生など、状況によってはより適した手続きがある場合もあります。
相談したからといって、すぐに手続きを進めなければならないわけではありません。まずは現在の状況を整理するところから始めましょう。
あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士
大阪弁護士会所属
【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。