
任意整理、自分には本当に効果があるのだろうか…
「任意整理をすれば楽になると聞いたけど、自分の場合はどうだろう」
「途中で払えなくなったらどうしよう」
「任意整理をしたのに、結局うまくいかなかったという話も聞く」
「自分はちゃんと解決できる側なのか、不安でしかたがない」
こうした不安を抱えたまま、相談に来られる方は少なくありません。
結論からお伝えすると、任意整理で「解決できる人」と「解決に至らなかった人」には、いくつかの共通したパターンがあります。
私は弁護士として15年以上、15,000件を超える債務整理案件に携わってきました。その経験から見えてきた違いを、この記事で正直にお伝えします。
任意整理で「解決できた」とはどういう状態か
まず「解決」の意味を整理しておきます。
任意整理における解決とは、和解成立後の返済計画を最後まで完遂し、生活が安定した状態のことです。
利息が減ったかどうか、月々の返済額が下がったかどうかも重要ですが、それよりも大切なのは「返済が途中で行き詰まらなかったかどうか」です。
どれだけ好条件の和解が成立しても、その後の返済が続かなければ解決とは言えません。逆に言えば、返済計画に沿って最後まで走り切れた方は、みなさん「解決できた」と言えます。
解決できた人に共通する4つの条件
長年の実務経験の中で、任意整理がうまくいった方には、次の4つの共通点がありました。
①毎月の返済原資が無理なく確保できていた
最も根本的な条件です。
任意整理では将来利息がカットされ、元本を分割して返済する計画を立てます。この毎月の返済額が、収入から生活費を引いた金額の中に無理なく収まっているかどうかが、成否を大きく左右します。
「何とかなるだろう」と少し無理をした返済計画では、収入が少し下がっただけで行き詰まります。最初の段階で、現実に即した返済額を設定できるかどうかが重要です。
②収入が安定していた、または安定する見込みがあった
返済は一度きりではなく、3年から5年間にわたって続きます。その間に収入が大きく変わると、返済が続かなくなるリスクがあります。
実際に、任意整理の交渉中に転職をされて、返済原資の確保が難しくなったというケースがありました。転職を予定されている方や、収入が不安定な時期にある方は、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
安定した収入がある方、または今後安定が見込める方は、任意整理が効果的といえる条件が整っています。
③対象となる借金の種類が適切だった
任意整理は、消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者との間で、返済条件を交渉する手続きです。
税金や国民健康保険料、養育費、罰金などは、任意整理の対象にはなりません。これらが借金の大半を占めている場合、任意整理をしても問題が解決しないことがあります。
また、自動車ローンは所有権留保の問題があり、任意整理の対象にすると車を引き揚げられるリスクがあります。こうした借金の種類と性質を最初に整理しておくことが大切です。
④弁護士に現状をありのまま伝えてくれた
これは、私が長年の実務を通じて強く感じていることです。
任意整理がうまくいった方に共通しているのは、弁護士の説明を素直に聞き入れ、現状をありのままに伝えてくれたという点です。収入・支出・借金の状況・生活環境、これらを正確に教えていただくことで、無理のない返済計画を立てることができます。
「こう言ったら怒られるかもしれない」「恥ずかしい」という気持ちから、一部を隠してしまう方もいらっしゃいます。しかし隠しごとがあると、実態に合わない計画になってしまい、後で行き詰まる原因になります。
弁護士は、あなたの味方です。どんな状況でも叱ったり問い詰めたりしません。正直に話していただくほど、あなたに合った解決策を一緒に考えることができます。
解決に至らなかった人のパターン
一方、任意整理で思うような結果が出なかった方には、次のようなパターンが見られました。
パターン①返済原資に最初から無理があった
家計収支を確認した段階で、毎月の返済合計額を賄うだけの余裕がないと感じられた方は、任意整理の途中で行き詰まることがあります。
再度の任意整理を求められるケースや、最終的に個人再生・自己破産に切り替えることになるケースもありました。
こうした場合、最初から個人再生や自己破産を選んでいれば、時間的にも費用的にも、より早く解決できていた可能性があります。
パターン②収入の変動で返済が続かなくなった
和解成立時点では問題なく払えていた返済額が、転職や収入減少によって払えなくなるケースがあります。
任意整理の交渉中に仕事が変わり、返済原資の確保が難しくなった、というのは実際に経験した場面です。今後、収入が変わる可能性がある方は、その点も含めて弁護士に相談してください。
パターン③対象外の借金が残ってしまった
消費者金融の借金は整理できても、税金や養育費などの対象外の借金が別途残り、結果として生活が楽にならなかったというケースもあります。
最初の相談時に、借金の全体像を正確に把握することが重要です。
パターン④費用対効果が合わなかった
元金が少額な場合、将来利息のカットによって節約できる金額よりも弁護士費用のほうが高くつくことがあります。
また、債権者の数が多い場合は、任意整理の弁護士費用が個人再生・自己破産の費用を上回るケースもあります。任意整理は元本が残るため、費用が高くなりながら元本減額もないという状況は、依頼者の経済的な立て直しにつながりにくいことがあります。
私は、こうした場合には費用対効果の説明をするようにしています。手続きの選択は、費用面も含めて総合的に判断することが大切です。
「解決できなかった」は失敗ではない
任意整理がうまくいかなかったとしても、それは失敗ではありません。
個人再生や自己破産への切り替えは、「より自分に合った手続きを選び直すこと」です。
信用情報機関への登録(いわゆるブラックリスト)は、CIC・JICCではいずれの手続きもおおむね完済等から5年程度で大きな差はありません。ただし、銀行系のKSCでは個人再生・自己破産が7年、任意整理が5年と2年の差があります。また、個人再生・自己破産では官報への掲載がありますが(任意整理では官報掲載はありません)、日常的に官報を確認する人はほとんどおらず、周囲に知られることはほぼありません。
「自己破産や個人再生は任意整理よりずっと傷が深い」というのは、必ずしも正確ではありません。詳しくは「自己破産と個人再生のブラックリスト期間」もあわせてご参照ください。
大切なのは、現在の状況に合った手続きを選ぶことです。
よくあるご質問
Q. 任意整理と個人再生、どちらを選べばいいかわかりません。
A. 毎月の返済原資が確保できるか、借金の総額、借金の種類などによって、向いている手続きが異なります。まずは現状をお聞きした上で、一緒に検討しましょう。詳しくは「債務整理の選び方」もご参照ください。
Q. 任意整理を一度完済した後、また借金が増えてしまいました。再度相談できますか?
A. もちろんです。以前に任意整理をご利用いただいた方でも、改めてご相談いただけます。「また来て申し訳ない」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、やむを得ず事情があってそうなってしまったことを責める理由はありません。勇気を持って相談していただければ、一緒に対処策を考えます。
Q. 収入が不安定でも任意整理はできますか?
A. 収入が不安定な時期は、返済計画の設計に慎重さが必要です。転職予定がある場合や、収入が変動しやすい状況にある場合は、その点も含めてご相談ください。状況によっては、個人再生や自己破産のほうが向いているケースもあります。
Q. 弁護士に全部正直に話すのが怖いです。
A. どうかご安心ください。借金の経緯や生活状況がどのような内容であっても、弁護士として叱ったり批判したりすることはありません。むしろ、ありのままの状況を教えていただくほど、あなたに合った現実的な解決策を提案できます。秘密は厳守します。
Q. 任意整理の費用が払えるか不安です。
A. 費用の分割払いに対応しています。また、法テラス(日本司法支援センター)の利用により費用の立替制度を使える場合もあります(利用には資力基準を含む一定の要件があります)。詳しくは「債務整理の弁護士費用はいくら?」をご参照ください。
弁護士としてお伝えしたいこと
任意整理がうまくいく人・いかない人の違いを一言で表すとすれば、「現状と向き合えているかどうか」だと思います。
借金の状況、収入、生活費、将来の見通し、これらを正確に把握し、弁護士にありのまま伝えていただくことで、現実に合った解決策が見えてきます。
「こんな状況では相談できない」と思っている方にこそ、ぜひ相談していただきたいのです。
また、任意整理がうまくいかないと感じた場合でも、それで終わりではありません。個人再生や自己破産という選択肢があり、どちらも信用情報への影響は任意整理と大差ありません。「どの手続きが自分に合っているか」を一緒に考えることが、私たちの仕事です。
まずは状況を整理することから始めましょう
「自分は任意整理で解決できるのだろうか」と不安に感じているあなた、一度立ち止まって現状を整理してみましょう。
あゐ法律事務所では、まず現在の借金・収入・生活状況をていねいにお聞きした上で、任意整理が向いているかどうか、他の手続きのほうが適切かどうかを、率直にお伝えします。
どの手続きが合っているかわからない方も、まずは相談だけでも構いません。
あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士
大阪弁護士会所属
【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。