
任意整理で全部まとめて解決できると思っていたのに…
「任意整理を頼めば、抱えている借金を全部まとめて解決してもらえると思っていた」
「税金や養育費の滞納も、任意整理で何とかなりますか?」
「車のローンが残っているけれど、任意整理に含めてもいいですか?」
任意整理を検討されている方から、このようなご質問をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、任意整理はすべての債務に対応できる手続きではありません。債務の種類によっては、そもそも任意整理の対象とならないものや、対象にはなっても現実的でないもの、債務に関係のある財産の引き揚げリスクなど別の問題が生じるものがあります。
この記事では、任意整理が向いている借金とそうでない借金を分類して、わかりやすくご説明します。
任意整理が向いている借金から確認しましょう
任意整理は、弁護士が債権者と直接交渉し、将来発生する利息(将来利息)のカットと分割返済の合意を目指す手続きです。
この手続きが最もよく機能するのは、次のような借入れです。
- 消費者金融からの借入れ(カードローン、フリーローンなど)
- クレジットカードのキャッシング
- クレジットカードのショッピングリボ払い
これらは、比較的高い利率が設定されていることが多く、将来利息のカットによって返済総額を減らす効果が出やすい類型です。また、担保や特別な法的制約がなく、債権者との交渉が比較的進めやすい特徴があります。
任意整理の対象とならない債務
税金・社会保険料・養育費・罰金といった債務は、一般的な意味での「借金」とは性質が異なります。これらは私人間の金銭消費貸借契約に基づく債務ではなく、公法上の義務や家族法上の義務に基づくものです。
任意整理は債権者との任意の交渉によって成立する手続きですが、こうした債務については、そもそも交渉による減額や利息カットの余地がありません。国や自治体、相手方当事者との間で別途対応を検討する必要があります。
税金・社会保険料の滞納であれば税務署や役所への分納相談、養育費であれば家庭裁判所での調停・審判といった手続きが対応の選択肢となります。
任意整理の対象にはなるが現実的ではないケース
奨学金・住宅ローン・高額ローン
奨学金や住宅ローン、リフォームローンなどは、法的な性質としては金銭消費貸借契約に基づく借金であり、任意整理の対象とすること自体は可能です。
しかし、元本が数百万円から数千万円に及ぶケースが多く、将来利息をカットしたとしても残る元本の返済負担は変わりません。分割回数を延ばしても月々の返済額がほとんど下がらない、あるいは返済期間が非現実的に長くなるという問題が生じます。
また、住宅ローンやリフォームローンを任意整理の対象にすると、住宅に関わる担保権の問題が絡むことがあり、手続きが複雑になる場合があります。
私がこれまで担当してきた案件の中にも、高額なローンを抱えたまま収入が途絶え、返済が困難になった方のご相談をお受けしたことがあります。任意整理では元本そのものは減らないため、こうしたケースでは任意整理だけで問題を解決するのは難しく、個人再生や自己破産も含めて幅広く選択肢を検討することが重要です。
奨学金の保証人がいる場合
奨学金については、もう一点注意が必要です。任意整理で本人の返済を止めると、保証人(連帯保証人)に対して一括請求が行われる場合があります。保証人が親族である場合には、家族への影響も考慮したうえで手続きを選択する必要があります。
なお、奨学金の保証方式には「人的保証」と「機関保証」があります。機関保証(保証機関が保証する方式)を選択していた場合は、個人の保証人が存在しないため、保証人への一括請求という問題は生じません。ご自身の奨学金がどちらの方式か、事前に確認しておくことをお勧めします。
オートローンには引き揚げリスクがある
自動車のオートローンについては、「所有権留保」という問題があります。
所有権留保とは、ローン返済が完了するまで自動車の所有権が販売店やローン会社に留保されている状態をいいます。ディーラーローンや信販系ローンの多くは、車検証上の所有者欄にローン会社名義が登録されており、この場合、任意整理によって返済が滞ると、ローン会社が所有権を根拠に車を引き揚げる(回収する)リスクがあります。
生活や仕事のために車が欠かせない方にとって、この引き揚げリスクは深刻な問題です。
オートローンが残っている場合の任意整理は、車を失うリスクを前提に慎重に判断する必要があります。
私の経験では、オートローンを含めた整理が必要な状況では、そもそも車を維持するより経済的な立て直しを優先すべきとして、任意整理よりも個人再生や自己破産を検討した方がよいケースが少なくありません。個人再生や自己破産では、元本の減額や免除という根本的な解決を図ることができるためです。
対象外・向かない借金がある場合の考え方
任意整理に向かない借金が含まれていても、すべての手続きが行き詰まるわけではありません。
一つの考え方として、任意整理の対象を選ぶという方法があります。複数の債務があるとき、任意整理はすべての債権者を対象にする必要はなく、特定の債権者だけを対象として交渉することができます。消費者金融やクレジットカードのみを任意整理の対象にし、住宅ローンやオートローンは手をつけずに継続返済するという選択も可能です。
ただし、消費者金融・クレジットカード以外に高額な債務が残っている場合や、債権者の数が多い場合には、任意整理だけでは経済的な立て直しが難しいケースがあります。そのような場合には、個人再生や自己破産も含めた選択肢を弁護士とともに検討することをお勧めします。
どの手続きが最も適切かは、借金の種類・総額・収入・家族構成・資産状況などによって異なります。一人で判断しようとせず、まず弁護士にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 税金の滞納と消費者金融の借金が両方ある場合、どう対処すればいいですか?
A. 税金の滞納と消費者金融の借金は、別々に対応することになります。税金の滞納については、税務署や市区町村の窓口で分納(分割納付)の相談をすることが一般的な対応です。消費者金融の借金については、任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理の手続きを検討することができます。ただし、税金の滞納が続いている状況では、全体的な返済計画をどう組み立てるかが重要になりますので、弁護士に状況を整理してもらうことをお勧めします。
Q. 住宅ローンが残っている場合、債務整理で家を守ることはできますか?
A. 個人再生には「住宅資金特別条項」という制度があり、住宅ローンだけを対象外として継続返済しながら、その他の借金を大幅に減額できる場合があります。住宅を守りながら債務整理を進めたいとお考えであれば、個人再生が有力な選択肢となります。詳しくは弁護士にご相談ください。
Q. 奨学金は任意整理できますか?
A. 法的には任意整理の対象にすることは可能です。ただし、奨学金は比較的利息が低い貸付であって、元本が大きい場合には将来利息をカットしても月々の返済負担がほとんど変わらないことがあります。また、保証人がいる場合には、任意整理によって保証人への一括請求が生じるリスクがあります。奨学金の整理については、個別の事情を踏まえた慎重な判断が必要です。
Q. 車のローンがある場合、自己破産すると車はどうなりますか?
A. 自己破産をした場合、ローンが残っている車は原則として手放すことになります(所有権留保がある場合はローン会社が回収します)。個人再生でも、ローン会社に所有権留保がある場合は同様です。ローン完済済みの車や、銀行系ローンで所有権留保がない場合は、手続き後も手元に残せることがあります。車の扱いについては、ローンの種類・残高・所有権の状況によって結論が異なりますので、弁護士にご相談ください。
弁護士としてお伝えしたいこと
任意整理は、手続きの負担が比較的少なく、家族や職場に知られにくいという特徴から、多くの方に選ばれる手続きです。しかし、「任意整理さえすれば全部解決する」という思い込みで進めてしまうと、対象にできない債務が残ったり、費用対効果が合わなかったりするケースがあります。
多数の債務整理案件を担当してきた経験から、はっきりお伝えしたいことがあります。それは、「どの手続きを選ぶか」よりも「あなたの状況を正確に把握してから考える」ことの方が大切だということです。
抱えている借金の種類・金額・債権者の数・収入・家族構成・資産の有無、これらをすべて整理したうえで、最も適切な方法を選んでいただきたいと思います。任意整理が向かないケースであっても、個人再生や自己破産という選択肢が経済的な立て直しの力強い手段になります。一つの手続きにこだわらず、幅広い視点でご相談ください。
まずは状況を整理することから始めましょう
「自分の借金が任意整理に向いているかどうかわからない」という方も、まずはご相談ください。
あゐ法律事務所では、債務の種類・金額・状況を丁寧に確認したうえで、最も適切な手続きをご提案しています。
任意整理・個人再生・自己破産のいずれが向いているかも含めて、一緒に考えます。
あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士
大阪弁護士会所属
【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。