
「費用が払えるかどうか不安」という方へ
債務整理を検討し始めたとき、こんな不安を感じる方が少なくありません。
「借金を整理したいのに、また費用がかかるのか」
「いくらかかるのか見当もつかない」
「費用が払えないから、相談に行けない」
この記事では、任意整理・個人再生・自己破産それぞれの費用の相場と内訳を正直にお伝えしたうえで、費用が払えない場合の現実的な対処法を解説します。
一つ先にお伝えすると、費用が払えないことは、相談をためらう理由にはなりません。
債務整理の費用は「弁護士費用」と「裁判所費用」の2階建て
まず費用の構造を理解しておくことが重要です。
債務整理の費用は、大きく2つに分かれます。
① 弁護士費用:弁護士に支払う費用。着手金・報酬金・減額報酬などで構成されます。
② 裁判所費用(予納金・手数料など):裁判所に納める費用。任意整理にはかかりませんが、個人再生・自己破産では発生します。
この2階建て構造を知らずに「弁護士費用だけ」で見積もっていると、実際の総額が想定より高くなることがあります。必ず「弁護士費用+裁判所費用の合計」で確認するようにしてください。
手続き別の費用相場
任意整理
弁護士費用の目安:1社あたり3〜5万円程度(着手金+報酬金)
裁判所を通さないため、裁判所費用はかかりません。3手続きの中で最も費用が安く、複数社ある場合でも1社あたりの費用は変わりません。
費用の構成:
- 着手金:1社あたり2〜3万円程度
- 報酬金:1社あたり2万円前後
- 減額報酬:設定している事務所の場合、減額分の10〜20%程度
過払い金が発生した場合は、回収額に対して別途成功報酬が加算されることがあります。
個人再生
弁護士費用+裁判所費用の目安:50〜90万円程度
費用の構成:
- 弁護士費用:40〜60万円程度(着手金+報酬金)
- 裁判所費用(予納金など):約2〜3万円程度
- 住宅ローン特則を利用する場合:さらに1弁護士費用として約10〜20万円程度が加算されることがあります
個人再生では、裁判所から「個人再生委員」が選任されるケースがあり、その場合は委員への報酬が別途必要になります。
個人再生委員の報酬(予納金)について:
裁判所の運用により大きく異なります。たとえば、東京地裁では弁護士申立てでも原則全件について再生委員が選任され、約15万円の報酬予納金が必要です。大阪地裁では弁護士が代理人の場合、原則として再生委員は選任されません。選任される場合は約20〜30万円が必要となります。
自己破産
弁護士費用+裁判所費用の目安:同時廃止は25〜40万円程度、少額管財は50〜70万円程度
自己破産は、「同時廃止」か「少額管財(管財事件)」かによって費用が大きく変わります。
同時廃止の場合:
- 弁護士費用:20〜30万円程度
- 裁判所費用(予納金):2〜3万円程度
少額管財の場合(弁護士が代理人になる場合):
- 弁護士費用:30〜40万円程度
- 裁判所への引継予納金:約20〜25万円程度
- 合計:50〜70万円程度
ここで重要なのが、少額管財は弁護士が代理人の場合に適用される運用である点です。弁護士が代理人として申立てを行うと、裁判所への予納金が約20万円程度に抑えられます。これに対して司法書士の場合は書類作成のみの対応となり、裁判所手続きは本人申立てとなるため、少額管財ではなく通常管財(特定管財)となり、引継予納金が最低50万円以上必要になります。
管財事件が見込まれる場合は、弁護士に依頼することで予納金を大幅に抑えることができます。
なお、裁判所費用(予納金)は、官報公告費・収入印紙・郵便切手の合計を基本として、債権者数や裁判所の判断など事案によって異なります。詳細は依頼の際にお尋ねください。
「どの手続きが費用的に有利か」という視点
費用だけを比較すると、任意整理が最も安くなります。しかし、費用だけで手続きを選ぶことには注意が必要です。
任意整理が費用的に安くても、元金が多く返済の見込みが立たない場合は、途中で行き詰まって改めて個人再生や自己破産に切り替えることになります。その場合、任意整理にかかった費用が無駄になるうえ、最終的な総費用は最初から個人再生・自己破産を選んだ場合より高くなることがあります。
費用は手続き選択の一つの要素ですが、現在の状況に合った手続きを選ぶことが、結果的に費用を抑えることにつながります。
当事務所でも、債権者数が多い場合など、任意整理の費用が個人再生・自己破産と比べて大きくなる場合は、費用面も含めてどの手続きが適切かを一緒に検討するようにしています。
費用が払えない場合の対処法
対処法① 受任通知後の返済停止を活用する
弁護士が受任通知を送付すると、貸金業者・債権回収会社からの取立て・督促が法律上停止されます(貸金業法第21条第1項第9号、債権管理回収業に関する特別措置法第18条第8項)。
これにより、それまで毎月の返済に充てていた資金を弁護士費用の支払いに回すことができます。費用を貯めてから依頼する必要はなく、依頼後に分割で支払っていく形が一般的です。
なお、銀行や個人からの借入れには同法の適用がなく、取立てが止まらない場合があります。
対処法② 分割払いを活用する
多くの事務所では、弁護士費用の分割払いに対応しています。月々の支払額は費用総額・分割回数によって異なりますが、5,000〜30,000円程度の範囲で設定されることが多いです。
相談の際に「分割払いに対応しているか」「何回払いまで可能か」を確認してください。
対処法③ 法テラスの立替制度を活用する
法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用すると、弁護士費用を法テラスが立て替えてくれます。立替後は月々5,000〜10,000円の分割で返済します。
法テラス利用時の費用目安(2025年時点):
- 任意整理:1社あたり約2万円程度
- 個人再生:25〜35万円程度
- 自己破産:13〜17万円程度
通常の弁護士費用と比べて半額程度に抑えられることが多く、費用面では大きなメリットがあります。
法テラス利用の条件:
利用には主に以下の要件があります。
- 収入・資産が一定の基準以下であること(例:単身者の場合、月収182,000円以下が目安。大阪市などの大都市圏では200,200円以下が目安)
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 報復目的等でないこと
なお、収入基準は世帯人数によって異なります。また、上記以外にも審査要件があり、すべての方が利用できるわけではありません。詳細は法テラス(0570-078-374)にご確認ください。
法テラス利用のデメリット:
法テラスを利用する場合、注意すべき点があります。
まず、弁護士を自分で選べない場合があります。法テラスの審査を通じて費用の立替を受ける場合、法テラスと契約している弁護士であることが前提となります(持込み方式で自分で弁護士を選ぶ方法もありますが、その弁護士が法テラスと契約していることが必要です)。
次に、受任通知の発送が遅くなる可能性があります。法テラスを利用する場合、原則として法テラスの審査・承認を得てから委任契約を締結することになります。そのため、審査期間中は受任通知が発送されず、貸金業者からの取立て・督促が続く場合があります。取立てを早急に止めたい場合は、この点も考慮したうえで判断してください。
また、手続きに時間がかかることがあります。審査から利用開始まで一定の期間が必要です。
なお、裁判所に納める引継予納金は法テラスの立替対象外です。 弁護士費用は法テラスで分割返済できますが、予納金はご自身で現金を準備していただく必要があります。ただし、生活保護を受給している場合は予納金(最大20万円)についても立替対象となります。
ちなみに、生活保護を受給している場合は、費用の償還が免除されるため、実質無料で手続きを進めることができます。
費用を確認するときに必ず聞いてほしいこと
相談の場で、以下の点を必ず確認してください。
- 費用の総額はいくらか(弁護士費用+裁判所費用を含めた合計)
- 追加費用が発生するケースはあるか(管財事件になった場合、債権者数が増えた場合など)
- 分割払いに対応しているか(分割回数・月々の支払額の目安)
- 法テラスの利用に対応しているか
これらに対して明確に答えてもらえるかどうかが、信頼できる事務所かどうかの判断材料になります。詳しくは「債務整理の相談先を選ぶときに確認したい7つのポイント」もあわせてご参照ください。
よくあるご質問
Q1. 費用の支払いが遅れたらどうなりますか?
弁護士費用の分割払いが遅れた場合でも、多くの事務所では状況に応じて対応してくれます。ただし、弁護士費用の支払いが大幅に滞ると依頼関係に影響が出ることがあります。支払いが難しくなった場合は、早めに担当弁護士に相談してください。
Q2. 相談だけなら費用はかかりますか?
事務所によって異なりますが、初回相談を無料としている事務所は多くあります。「無料相談」は相談料が無料という意味であり、依頼した場合の費用(着手金・報酬金など)は別途発生します。
Q3. 費用倒れになることはありますか?
任意整理の場合、減額分より弁護士費用が上回ることは通常ありません。費用の大半が「減額に成功した金額の一部」を報酬として支払う形になるためです。ただし、借入総額が少ない場合は費用対効果を慎重に検討する必要があります。相談の段階で、費用と減額効果の見通しを確認するようにしてください。
Q4. 費用が心配で相談に行けていません。どうすればいいですか?
まず相談することをお勧めします。相談の場で現在の状況を整理し、費用の見通しや分割払い・法テラスの利用可能性を確認することができます。費用の不安を抱えたまま放置することで、借金がさらに膨らむリスクがあります。「借金がいくらになったら弁護士に相談すべき?」もあわせてご参照ください。
弁護士としてお伝えしたいこと
「費用が払えないから相談できない」とおっしゃる方が、本当に多くいらっしゃいます。
ただ、多くの場合、費用の支払いは依頼後に分割で進めることができます。費用が手元にないことは、相談をためらう理由にはなりません。
また、費用の安さだけで依頼先を選ぶことにも注意が必要です。手続きの選択を誤ったり、交渉の結果が十分でなかったりすると、長期的に見て費用以上の損失が生じることがあります。費用の透明性と、依頼後の対応の質を合わせて確認することをお勧めします。
費用について不安がある場合は、その不安を相談の場で正直に話してみてください。一緒に考えられることがあります。
まずは状況を整理することから始めましょう
どの手続きが向いているかは、借金の状況・収入・財産などによって異なります。相談したからといって、すぐに手続きを進めなければならないわけではありません。
まずは一度、現在の状況を整理するところから始めましょう。「これからどうするか」を一緒に考える場にできればと思っています。
当事務所は淀屋橋に事務所を構えており、大阪を中心に京阪神・近畿一円からのご相談をお受けしています。
あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士
大阪弁護士会所属
【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。