コラム
2026/03/28

自己破産を相談する前に準備すること|必要書類と手続きの流れ

法律の専門家があなたの疑問にお答えします


「何を準備すればいいのかわからない」というあなたへ

自己破産を検討し始めたとき、多くの方がこう考えるようです。

「弁護士に相談したいけど、何を用意すればいいのかわからない」

「書類が足りなかったら、相談できないのでは」

「何も準備できていない状態で相談に行っても大丈夫なのか」

結論からお伝えすると、初回相談に完璧な書類を揃えていただく必要はありません。まずは現在の状況をお話しいただくだけで大丈夫です。

ただ、ある程度情報を整理してご相談いただくと、その場での説明がより具体的になり、今後の見通しを立てやすくなります。この記事では、相談前に準備しておくと役立つことと、実際の手続きの流れを順を追ってお伝えします。


相談前に整理しておくと役立つこと

書類として揃っていなくても、以下の情報を頭の中で整理しておくだけで、初回相談がスムーズになります。

① 借入先と借入残高の概要

どこから、いくらくらい借りているか。消費者金融・クレジットカード・銀行カードローン・知人への借金など、思い当たるものをざっくりと把握しておくと話がしやすくなります。正確な金額がわからなくても構いません。

② 収入の状況

月々の手取り収入の目安。お務めであれば直近の給与明細、自営業やフリーランスであれば直近の売上の概算がわかると、どの手続きが向いているかの判断がしやすくなります。

③ 財産の状況

自宅(持ち家か賃貸か)、車、預貯金の概算、生命保険の有無など。「何があるか」を把握しておくと、手続きの見通しを立てる際に役立ちます。

④ これまでの経緯

いつ頃から返済が苦しくなったか、督促が来ているか、訴訟や差押えを受けているかどうか。急ぎ対応の判断にかかわる情報ですので、思い出せる範囲でお知らせください。


正式に依頼した後に必要になる書類

相談を経て正式に依頼をいただいた後、申立ての準備として書類の収集が始まります。必要な書類は事案によって異なりますが、一般的に以下のものが必要になります。

本人確認・住所確認

  • 運転免許証・マイナンバーカードなどの身分証明書
  • 住民票(発行から3か月以内のもの)

収入に関する書類

  • 直近2〜3か月分の給与明細
  • 源泉徴収票(直近1〜2年分)
  • 自営業やフリーランスの方は確定申告書の写し

借入れに関する書類

  • 借入先の契約書・明細書(手元にあれば)
  • 督促状・訴状・差押え通知などが届いている場合はそのコピー

なお、各借入先への取引履歴の開示請求は弁護士が行います。手元に書類が揃っていなくても手続きを進めることができます。

財産に関する書類

  • 預貯金通帳のコピー(直近1〜2年分)
  • 不動産登記簿謄本(持ち家がある場合)
  • 固定資産評価証明書(持ち家がある場合)
  • 賃貸借契約書(賃貸の場合。敷金の状況確認などで必要になることがあります)
  • 生命保険・自動車保険などの証券、解約返戻金の確認書類
  • 退職金見込額証明書(退職金制度がある勤務先に在籍している場合)

家計に関する書類

  • 家賃・水道光熱費・食費などの支出の概算(家計収支表として整理します)
  • 同居家族がいる場合は、事案によって家族の収入に関する書類が必要になることがあります

書類収集で気をつけておきたいこと

書類を集める段階で、依頼者の方が思いのほか収集に手間取ることがあります。よくあるケースをいくつかご紹介します。

保険の解約返戻金の確認

生命保険や医療保険については、保険証券に解約返戻金の金額が記載されているものはそのまま確認できます。ただし、解約返戻金が証券に記載されていないタイプの保険は、保険会社に問い合わせて金額を確認していただく必要があります。また、自動車保険(自賠責保険)についても、未経過分の保険料(解約返戻金に相当するもの)を月割りで算出する必要があるため、こちらも確認が必要になる場合があります。

「保険に入っているかどうかも曖昧」という方もいらっしゃいます。保険証券が見当たらない場合は、保険会社や保険代理店に確認するところから始めていただくことになります。

退職金見込額証明書の取得

退職金については、仮に今、退職した場合に支給される見込み額が調査の対象となります。勤務先に「退職金見込額証明書」の発行を依頼していただく必要がありますが、「なぜ突然こんな書類が必要なのか」と会社側に思われないか、不安を感じる方が少なくありません。

証明書の取得が必要な理由は、退職金請求権が財産として評価される可能性があるためです。手続き上必要な書類であることをご説明したうえで、できる限り会社側に不自然に思われない形で依頼していただけるよう、弁護士としてもサポートします。なお、退職金見込額がどの程度手続きに影響するかは、金額や事案の内容によって異なります。

通帳・取引履歴の準備

預貯金通帳については、直近1年から2年程度の記帳内容を写しで提出していただきます。しばらく記帳していなかった場合、ATMで一括記帳すると古い明細が省略されてしまうことがあります。その場合は、金融機関の窓口で取引履歴の発行を依頼していただく必要があります。

ネットバンクやスマホ決済の口座についても同様です。口座情報が分かる画面を含めて、取引履歴のデータを出力して印刷するか、スマートフォンなどで画像を撮って提出していただきます。「通帳がない口座は提出しなくていいか」と思われる方もいらっしゃいますが、すべての口座が対象になります。ログイン情報を手元に準備しておいていただくとスムーズです。


自己破産の手続きの流れ

書類が揃ったら、次のステップに進みます。一般的な流れをご説明します。

ステップ① 弁護士への相談・受任

相談の結果、自己破産が適切と判断されれば、正式に依頼(受任)をいただきます。受任後、弁護士から各債権者へ受任通知を発送します。受任通知を受けた貸金業者は、原則としてあなた本人への直接の取り立てができなくなります。

ステップ② 申立て準備(書類収集・家計状況の整理)

必要書類を収集しながら、家計収支表・債権者一覧表・財産目録などの申立て書類を作成します。この期間は通常2〜4か月程度ですが、債権者の数や書類の収集状況によって前後します。

ステップ③ 裁判所への申立て

書類が整ったら、裁判所に破産申立てを行います。申立て後、裁判所が同時廃止手続きと少額管財手続きのどちらで進めるかを判断します。

ステップ④ 同時廃止か少額管財か

同時廃止は、財産がほとんどなく、免責不許可事由(ギャンブル・浪費など)も特に問題がないと判断された場合に選ばれます。手続きが比較的シンプルで、期間も短くなります。申立てから免責許可決定まで、概ね3〜6か月程度が目安です。

少額管財は、一定以上の財産があったり、収支・財産の内容を詳しく調査する必要があると判断された場合、免責不許可事由(ギャンブル・浪費など)に該当するような事情がある場合に選ばれます。破産管財人が選任され、財産の調査・換価・配当、免責不許可事由の有無の検討が行われます。同時廃止に比べて期間・費用ともに大きくなり、申立てから終結まで概ね6か月〜1年程度が目安です。

どちらになるかは、申立て時の財産状況や事案の内容によって裁判所が判断します。

ステップ⑤ 免責許可決定

手続きの最終段階として、裁判所による審査が行われます。事案によっては、裁判官との面談(免責審尋)が行われることがあります。問題がなければ免責許可決定が出され、これが確定すると原則として借金の支払義務がなくなります。


相談前によくある不安とその答え

「仕事や資格への影響はありますか?」

破産手続開始決定を受けると、免責許可決定が確定するまでの間、一定の職業・資格に一時的な制限がかかります(弁護士・司法書士・警備員など)。免責許可決定が確定すれば制限は解除されます。一般的な会社員や自営業者の多くは、この制限の対象外です。ご自身の職種が該当するかどうかは、相談時にご確認ください。

「家族への影響はありますか?」

原則として、自己破産の効果はご本人にのみ及びます。家族が連帯保証人や保証人になっていない限り、家族の借金になることも、家族の財産が処分されることもありません。詳しくは「債務整理を弁護士に頼むと家族や会社に知られますか?」もあわせてご参照ください。

「財産はすべて取られてしまうのですか?」

すべての財産が処分されるわけではありません。生活に必要な家財道具や、一定額までの現金は手元に残すことができます(自由財産)。持ち家がある場合は原則として手放すことになりますが、賃貸にお住まいであれば引き続き住み続けることができます。

「督促や差押えが来ている場合はどうなりますか?」

受任通知の発送により、貸金業者からの直接の取り立ては法律上制限されます。すでに訴訟や差押えが始まっている場合は別途対応が必要ですが、自己破産の申立てによって差押えを止められる場合があります。受任通知の効果と範囲について詳しくは「弁護士に相談すると取り立ては止まりますか?」もあわせてご参照ください。緊急の状況であれば、早めにご相談ください。


弁護士としてお伝えしたいこと

「準備が足りなくて、相談に行っていいのかわからない」

そのように考える方が少なからずいらっしゃるのではないか、と思います。

書類が一枚も揃っていなくても、相談に来ていただいて構いません。まず状況をお話しいただければ、何が必要で、何からはじめればいいかを一緒に整理することができます。

「こんな状態で来てしまって申し訳ない」と思わなくて大丈夫です。借金の問題は、抱えている方それぞれに事情があります。完璧な準備ができてからではなく、「もう限界かもしれない」と感じた、その瞬間が相談のタイミングです。

自己破産の手続きについては「自己破産したら人生終わりですか?弁護士が教える『本当のこと』と『これからの話』」もあわせてご参照ください。


まずは状況を整理することから始めましょう

自己破産が適切かどうかは、借金の状況・収入・財産などによって異なります。任意整理や個人再生など、状況によってはより適した手続きがある場合もあります。

相談したからといって、すぐに手続きを進めなければならないわけではありません。まずは一度、現在の状況を整理するところから始めましょう。「これからどうするか」を一緒に考える場にできればと思っています。

当事務所は淀屋橋に事務所を構えており、大阪を中心に京阪神・近畿一円からのご相談をお受けしています。

お気軽にご相談ください。


あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士たけうちよしじ
大阪弁護士会所属

【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法令・実務を前提としており、法改正や個別事情により結論が異なる場合があります。具体的なご判断や手続の選択については、必ず弁護士にご相談ください。

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