コラム
2026/03/23

個人再生と自己破産どっちを選ぶべき?弁護士が教える判断基準

法律の専門家があなたの疑問にお答えします


「どちらが得か」より「どちらが自分に合っているか」

借金の返済に行き詰まり、債務整理を検討し始めると、多くの方が「個人再生と自己破産、どちらがいいんだろう?」と悩まれます。

「できれば財産を残したい」
「でも、少しでも返済額を減らしたい」
「仕事への影響はどちらが少ないのか」

そんな思いが交錯して、なかなか一歩が踏み出せない方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、個人再生と自己破産に「どちらが絶対に得か」という答えはありません。大切なのは、あなたの今の状況に合っている手続きはどちらかを見極めることです。

この記事では、個人再生と自己破産それぞれの特徴と、選び方の判断基準をわかりやすく解説します。


個人再生とは?特徴をおさらい

個人再生とは、裁判所の手続きを通じて借金を大幅に減額し、残った金額を原則3年(最長5年)かけて分割払いする手続きです。将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあり、住宅ローンなどを除く無担保債務総額が5000万円以下であることなどが利用の前提となります(裁判所「個人再生」)。

個人再生の主な特徴

  • 借金を大幅に減額できる(法律上の最低弁済額、清算価値(※1)、可処分所得(※2)などを踏まえて弁済額が決まります)
  • 住宅を手放さずに済む可能性がある(住宅資金特別条項(いわゆる住宅ローン特則)の利用で自宅を維持できる場合があります)
  • 継続的な収入が必要(返済能力があることが前提条件です)
  • 自己破産と異なり、免責という概念はなく、減額後の金額は返済が必要です
  • 個人再生では、自己破産と異なり、法令上の資格・職業制限は原則としてありません(ただし、勤務先の内部規程や業法上の個別審査が問題になることはあり得ますが、これは個人再生に固有の法的制限ではありません)
  • 個人再生をすると、信用情報機関や登録内容に応じて一定期間、信用情報に影響が及ぶ可能性があります。登録期間は一律ではなく、その後に借入れやクレジットカードが利用できるかは、金融機関等の審査によります

(※1)清算価値:仮に持っている財産を破産で処分した場合に、債権者へ回る見込み額
(※2)可処分所得:収入から税金・社会保険料・法定の最低生活費を引いた後に残るお金


自己破産とは?特徴をおさらい

自己破産とは、支払不能の状態にある方が裁判所に申立てをし、必要に応じて一定の財産を換価・配当したうえで、免責許可決定が確定すれば、原則として残った借金の支払義務の免除を受けられる手続きです(裁判所「自己破産」)。

自己破産の主な特徴

  • 借金全額の返済義務がなくなる(裁判所の免責許可決定が確定すると、原則として債務が免除されます)
  • 一定以上の財産は換価・配当の対象となります(ただし、自由財産として手元に残せるものもあります)
  • 一定期間、一部の職業・資格に就けなくなる場合があります(弁護士・司法書士・警備員など、免責許可決定が確定すればその制限は解除されます)
  • 非免責債権(税金・罰金・養育費・婚姻費用・故意または重大な過失による不法行為に基づく損害賠償など)は免責されません
  • 信用情報への影響が及ぶ期間は、信用情報機関や登録内容により異なります。一定期間は新たな借入れやクレジットカードの利用が難しくなることがありますが、最終的には金融機関の判断によります
  • 収入がなくても申請できます

どちらを選ぶべきか?3つの判断基準

判断基準① 住宅ローンが残っている家はありますか?

自宅を守りたい方は→個人再生(住宅ローン特則)を検討

自己破産をした場合、住宅ローンが残っている自宅は原則として手放すことになります。一方、個人再生には「住宅ローン特則」という制度があり、住宅ローンの返済を続けながら他の借金を減額できる場合があります。

「家だけは残したい」とお考えの方にとって、個人再生は非常に重要な選択肢です。

ただし、住宅ローン特則の利用には条件があり、すべてのケースで自宅を維持できるわけではありません。詳しくは弁護士にご確認ください。

判断基準② 安定した収入がありますか?

収入がない、または不安定な方は→自己破産を検討

個人再生は、減額後の借金を3〜5年かけて継続的に返済する手続きです。そのため、継続的かつ安定した収入があることが前提となります。フリーランスや自営業の方でも申請可能ですが、収入の安定性を証明できることが重要です。

一方、現在収入がない方や、収入はあっても返済が現実的に見込めない方には、全額免除を目指す自己破産の方が実態に即している場合があります。

判断基準③ 借金の規模と財産の状況はどうですか?

財産が多い方は→個人再生が有利なケースも

自己破産では、一定以上の財産(不動産、車、預貯金など)は換価されて債権者への配当に充てられます。手元に残す「自由財産」の範囲は法律で定められていますが、まとまった財産がある場合は自己破産で財産を失うリスクがあります。

個人再生では、財産を失わずに済む代わりに、「清算価値保障原則」(少なくとも破産した場合に債権者へ配当される見込み額(清算価値)を下回る弁済額にはできない、というルール)があるため、財産が多いと最低弁済額が上がります。どちらが有利かはケースバイケースです。


任意整理という第三の選択肢

個人再生・自己破産と並んで、任意整理という手続きも債務整理の一つです。

任意整理は、裁判所を使わずに、弁護士が直接各債権者と交渉して返済条件(主に将来の利息のカット)を見直す手続きです。手続きが比較的シンプルで、交渉する債権者を選べることが特徴です。

  • 通常、元本そのものを大幅に減らすことは難しいですが、将来利息をカットし、分割払いを見直すことで、返済総額や月々の負担を軽くできることがあります。
  • 一般に、家族や職場に知られるリスクを比較的低く抑えやすい傾向があります
  • 収入は必要ですが、個人再生ほど高い返済能力は求められません

「借金全体の額はそれほど多くないが、利息が重くて返せない」「特定の借入先だけ整理したい」という方には、任意整理が向いている場合もあります。

任意整理が適しているかどうかも、借入先や返済状況に応じて個別に検討する必要があります。

詳しくは債務整理の手続きについてもご覧ください。


結局どちらを選べばいいか?

以下の表を目安にしてみてください。

状況おすすめの手続き
住宅ローンがあり、自宅を守りたい個人再生(住宅ローン特則)
安定した収入がない自己破産
借金は多いが財産もある個人再生か自己破産か要検討
収入はあるが借金が重い任意整理・個人再生を検討
とにかく借金全額をゼロにしたい自己破産

ただし、これはあくまで目安です。実際には、借金の総額・借入先の数・収入の安定性・家族構成・職業への影響など、さまざまな要素を総合的に判断する必要があります。


よくあるご質問

Q1. 個人再生と自己破産、どちらが「楽」ですか?

どちらが手続き的に「楽か」は一概には言えません。個人再生は減額後の返済が続くため、手続き後も返済の努力が必要です。自己破産は財産を失う可能性や職業制限がある反面、返済義務がなくなります。「どちらが楽か」ではなく「どちらが自分の状況に合っているか」で選ぶことが重要です。

Q2. 自己破産をすると家族に影響はありますか?

原則として、自己破産の効果はご本人にのみ及びます。家族が連帯保証人や保証人になっていない限り、家族には影響がありません。ただし、家族名義の財産でも実質的にご本人のものとみなされる場合など、個別の事情によって異なることがあります。

Q3. 個人再生の返済が途中で払えなくなったらどうなりますか?

再生計画どおりに返済が続けられない場合、再生計画が取り消される可能性があります。その場合は、自己破産など別の手続きに切り替えることを検討する必要が出てくることがあります。返済中に生活状況が変わった場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

Q4. 手続きにはどのくらい時間がかかりますか?

手続きにかかる期間は、事案の内容、債権者数、財産の有無、裁判所の運用などによって異なります。一般的には数か月から1年程度を見込むことが多いですが、これより短いことも長いこともあります。また、弁護士が受任し受任通知を送付すると、貸金業者等からの直接の請求や取立てが止まるのが通常です。


弁護士としてお伝えしたいこと

これまで多くの債務整理案件に携わる中で、よくお聞きする言葉があります。

「もっと早く相談すればよかった。」

借金の問題を一人で抱えて悩み続けた時間、夜も眠れなかった日々、家族に言えなかった苦しさ。そういった話を、たくさんの依頼者の方からうかがってきました。

個人再生か自己破産か、正解は人によって違います。そして、その正解を一緒に探すのが私の仕事です。

「自分はどの手続きが合っているのか」
「こんな状況で相談していいのか」

そう思わなくて大丈夫です。借金の問題に「恥ずかしい相談」は一つもありません。


まずは状況を整理することから始めましょう

個人再生・自己破産・任意整理、どの手続きが向いているかは、あなたの借金の状況、収入、財産などによって異なります。相談したからといって、すぐに手続きを進めなければならないわけではありません。

まずは、一度ゆっくりお話を聞かせてください。「これからどうするか」を一緒に整理する場にできればと思っています。

お気軽にご相談ください。


あゐ法律事務所 弁護士 竹内欣士たけうちよしじ
大阪弁護士会所属

【免責事項】本記事は、債務整理に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。記載内容は執筆時点の法律・実務に基づいていますが、法改正や個別の事情によって結論が異なる場合があります。具体的なご判断については、必ず弁護士にご相談ください。

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